本書は約8年間にわたって企業や自治体のLGBTQに関する施策の推進を支援してきた認定NPO法人、虹色ダイバーシティの代表である著者の活動記録に加え、少女時代からレズビアンだった著者の自叙伝が書かれています。
NPO法人を立ち上げるに至った理由、そこに込めた思い、そして築き上げてきた実績とこれからの展望を、今この時点で振り返っておきたかったという。
LGBTはよく聞きますが、本書では「LGBTQ」と「Q」を加えた言葉を使用しています。LGBTQは、性的少数者(セクシャルマイノリティ)を表す言葉で、 レズビアン、ゲイ、バイセクシャルといわれる性的指向、トランスジェンダーといわれる性自認、クエスチョニングの頭文字をとった言葉です。
クエスチョニングとは、自分の性自認や性的指向が定まっていない状態、またはあえて定めていない状態の人を指す。
自分の性別が男性と女性のどちらなのかわからない。自分の恋愛対象が同性と異性のどちらなのかわからない。確定ではないものの性に関する違和感を持っている。性が流動的な場合もあれば、自らの性は定まることがないと考えている人もいる。
単純に男が好きな男。女が好きな女。どちらも好きな人。そんなくくり程度でしか認識はありませんでしたが、男が好きな男は、必ず女の容姿になりたいわけでもないのはもちろん「Q」というそんな人が存在することを、とても考えさせてくれる内容でありました。
前半は著者の半生記、後半はLGBT関連施策と企業の取り組みなどが紹介されています。著者自身、LGBTに理解を示しているような大企業に就職しても、カムアウト出来なく職場の雰囲気に疲れ果て、やがて精神を病むようになった経緯や、自殺しようと彷徨った様子なども詳細に書かれています。
前に読んだ「トランスジェンダー入門 / 周司あきら,高井ゆと里」でも書かれていましたが、自殺率の高さ、就職時の難しさ、故に陥る貧困。すべてのことが男女に分けられていることにより、社会で生活して行く苦しさ。学校、トイレ、更衣室、公衆浴場、病院など。当事者として自分のことが書かれているので、とてもリアリティを感じることが出来ました。
私は経営者なのでいつLGBTQの人から就職希望があるかもしれない。その時、私はどう接したらいいのか。どう接するべきか。雇用した場合、どんな対策をすればいいのか。LGBTQの秘密を他人に漏洩することは「アウティング」というパワーハラスメントになるという。そんなLGBTQの知識を知らないことはダメで、もっと知ろうと努力しなければならない。そんなことを深く考えさせてくれる本書でありました。
3月16冊目_2025年64冊目