何もしないほうが得な日本 社会に広がる「消極的利己主義」の構造 / 太田肇

 貧しいニッポン、働かないおじさん、無気力な若者、進まない女性活躍社会。そんな日本では実態とは裏腹に「失敗を恐れないチャレンジ」「イノベーション」だとか、そんなカッコいいスローガンが虚しく響く。

 なぜ、ここまでに理想と現実がかけ離れてしまっているのか?

 乖離の理由は、多くの日本人が消極的利己主義で、すなわち自己利益と保身のために、現状を変えないほうが得だという意識を潜在的に持っているためだという。

 多くの日本人は、その事実に気づいているが、あえて口にはしなかった。日本人の胸裏に隠されたタブーを、本書は大規模アンケート調査により浮き彫りにしています。

 本を読んでいて、気になったことをメモ帳に書くようにしていますが、書かれたメモにはこんなことが書いてあった。

・出る杭になりたくない

・得意なことを隠す。

 同調圧力に代表されるような、現状を変えないほうが得だという意識を、私達日本人は潜在的に持っている。「出る杭」になって目立つより、「得意」なことを主張して、自分の仕事を増やすようなことはしない。

 「何もしないほうが得」的な思想が蔓延している世の中です。ではどうすればよいのか。本書の提案は「するほうが得」に変えればいいと、さまざま提案していますが、実行性にすこし乏しい感じはしましたが、提案を考えることで現在の社会の仕組みをよく理解できるような本書でありました。

2月19冊目_2025年30冊目