給食の謎 日本人の食生活の礎を探る / 松丸奨


 昭和の給食を食べていた私ですが、本書は令和の給食 について記述されています。昔はパンが当たり前でご飯はたまにと言うイメージだった。ご飯は最初の頃は、袋に入ったやつで、途中からアルマイトの入れ物になったような記憶がある。現在はパンは週一回で、ほかの日はご飯や麺類が主食になっていると言う。

 現役の学校栄養士で給食マニア の著者が語る、給食に対する愛、そして日々のエピソード、献立作成の裏側から厳格すぎる衛生管理まで、とても興味深く読ませていただきました。

 「献立作成ソフト」というものが存在するという。献立を考え、その材料を入力すると栄養分やコストが算出される。美味しいものを提供したいが、栄養分とコストという制限が人間味のない、「献立作成ソフト」から警告される。

 作る立場としては、食べきってほしいという欲望がある。残食という、残ったまま残って来る食材にショックを受けるのだという。

 そんな出来事に関する著者の対応がすごい。一例ではあるが、小学生に「揚げパンは胃がもたれるので、好きになれない」と、言われどうやればもたれないのか。自宅で、揚げパンを作り続け、2週間、揚げパンしか食わなかったという。

 著者の執念とも思えるような給食愛 をとても感じられるのはもちろんですが、知らない現実も知ることが出来ました。

 一食あたりのコストは250円 だという。それは、食材の値段。それ以外の人件費や施設の投資や維持費は含まれていない。それらは #すべて税金で賄われている。民間のコストに換算すれば、給食一食あたり1000円 くらいでは無いかと著者はいう。それくらい設備投資と、人件費にコストが掛っている。

 それが、税金使ってけしからんと思えないのが本書です。本書は著者の報酬(給料)に関する全く記述はない。そこそこはもらっているのだろう。笑

 しかし、これほど、コンビニ食に代表されるような、美味しくて安ければ何でも口にする。そんな社会に対し、給食はこれほど考えられていて、#日本の子どもたちの将来を培っている。

 そんな現実の垣間を知れただけでも、十分に読む甲斐があった本書でありました。宮古市は現在1箇所で給食を作り、しない全域に供給している。それを食えるのは、学生と学校関係者だけです。

 1日限定何食でもいいので、一般に提供すれば、私も食べたい し、#食べたい近隣住民もいるのでは無いか。食料品を扱う商店にはダメージはあるかも知れない。それはそれで、給食を作る側で、仕入先をコントロールすればいいのではないか。

 どんな本を読んでも、これからの日本を懸念する材料として登場するのは「人口減少」というキーワードです。私もそれは常に考えているし、人材を確保出来ないことにより、倒産する会社が世の中に多くなっていることもよく理解している。

 給食の話から、人口減少、自分の会社の人材の確保。そんなことをつなげ考えることが出来るようになったのは、読書の効能 なのだろう。

 こんな感覚を得ることが出来ると、読書の欲が増える だけ。笑 ソクラテスが唱えた「無知の知」知らないことを知っていることが如何に重要か。

 私は本を沢山読んでいますが、知れば知るほどもっと知りたいことが増えて来る。自分が知らないことを知れるのです。笑

 本書は昭和の給食しかしらない自分に、令和の給食事情を教えてくれました。自分の過去に依存する価値観と、現在進行系のこれからももっと進化するであろう、そんな給食の世界を知れた、とても有意義な本書でありました。

4月6冊目_2024年81冊目