原子力はいる?いらない?原発大国フランスと脱原発ドイツ/川口マーン惠美,山口昌子

 フランス在住のジャーナリスト山口昌子氏と、ドイツ在住の作家、川口マーン惠美氏が対談形式で、エネルギー政策をめぐるフランスとドイツの対照的な道筋を比較し、日本が進むべき方向を考察している感じの内容になっています。

 フランスとドイツのエネルギー政策は180度異なっている。フランスは国家の独立と安全保障を最優先に、電力の7割以上を原子力で賄う原発大国。一方、ドイツは福島事故を機に脱原発を強行し、再生可能エネルギーを推進したが、ロシア依存やエネルギー危機を招き、電気代高騰や産業空洞化のリスクを生んでいる。
 エネルギー安全保障の重要性として、エネルギー資源を中東・ロシア・中国に依存するのは危険。80年前の太平洋戦争も、米国によるエネルギー封鎖が一因だったように、他国にコントロールされるリスクが最大の脅威となる。そのため、フランスは石油ショック後の経験から原発を推進し、エネルギー自立を実現してきた。

 しかし、ドイツは脱原発に舵をとり「原発はいらない」という主張は理想論だが、リスクゼロを求める政策は、実は最大のリスクを生む。実際、フランスの原発から大部分の電気を輸入しているという現実も存在する。

 原発のリスクとメリットとして、原発はテロや戦争時の攻撃リスクがあるが、フランスは第3世代原発(EPR)を稼働させ、安全対策を強化しているという。メリットとして安定供給、低CO2、経済性が高い。しかし、フランスより日本は世界最高水準の核燃料サイクル技術を持っているという。

 本書で日本の教訓として次のことを提言しています。リスクゼロ志向がエネルギー政策の失敗を招く。原発再稼働か電気代高騰・物価上昇かの選択を迫られ、エネルギー安全保障の意志を継ぎ、原子力を活用すべき。再生エネ一辺倒は中国依存を深め、国家の独立を損なう。

 私は色々な本を読んでいるので理解しているつもりですが、現在の電気代の高騰はなぜ起こったのか。円安だけが原因でないことを、なぜメディアは報じないのか。太陽光や風力というクリーンという名の「鎧を被ったエネルギー」が、既存の火力や原子力にどれだけ迷惑を掛けているのか。そんなことを考えさせてくれる本書でありました。