婚活マエストロ/宮島未奈

 主人公は、40歳のライター、猪名川健人。怪しげな雰囲気の婚活事業を営む会社「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事を書く仕事を引き受ける。

 安っぽいホームページと雑居ビルの小さな事務所に不安を覚えつつ、取材で手作り感あふれる地味なパーティーに参加。

 そこで出会ったのが、場違いなほど姿勢が良くスーツを着こなした美女の司会者、鏡原奈緒子。彼女こそが、業界では名を知らぬ者はいないと評判の「婚活マエストロ」

 鏡原は「本気で結婚を考えている人以外は来てほしくありません」と生真面目に宣言し、シニア向けパーティーや婚活バスツアーなど、様々なイベントをテキパキと取り仕切り、次々とカップルを誕生させる。

 これまで結婚に全く興味がなかった猪名川だが、鏡原の謎めいた存在と、様々な参加者たちとの出会いを通して、次第に「真面目に婚活するのも悪くないかもしれない」と思い始める。

 取材対象であるはずの同社のイベントを手伝うようになり、やがて参加者として他社の婚活パーティーにいる鏡原の姿を目撃するに至る。

 婚活というテーマを通じ、40代男性の成長と、婚活の現場のリアル、そして不器用ながらも真剣に結婚を望む人々の姿を描かれています。

 自分は結婚してもう30年以上経つけれど、主人公のように40歳まで独身だったら、婚活に励んでいたのだろうか。

 婚活パーティーに参加する様々な人間のキャラや、そのやりとりなど、とても楽しめる一冊でありました。