解剖学者ならではの冷徹かつ温かい視点から、本書の中心的なメッセージである「壁」を力ずくで乗り越えることではなく、むしろその存在を認め、しなやかに「かわす」ことの重要性にあるという。
人生の壁に立ち向かうための究極の指針として、著者は「とらわれない」「偏らない」「こだわらない」という三つの哲学を提示しています。
私たちは往々にして、既存の価値観、効率性、そして「生きる意味」といった観念に過剰にとらわれがち。人生は本来厄介で面倒くさいものであり、それを否定せず、あるがままに受け入れることが、心の平穏につながると説いています。
若者へのメッセージとして、著者は「嫌なことをやってわかることがある」と説いています。現代社会はコストパフォーマンス(コスパ)やタイムパフォーマンス(タイパ)を重視し、面倒なことや無駄に見える経験を避けようとしている。
しかし、煩わしい日常や一見無意味な経験こそが、人間的な深みや真のスキルを育む「学習の場」であり、そして、全力で何かをやったとしても、いちいち結果を反省したり、くよくよ悩んだりせず、淡々と次に進む姿勢が大切だとしています。
「とらわれない」「偏らない」「こだわらない」という三つの哲学は必要だとは思いますが、「煩わしい日常や一見無意味な経験」を大事にするためににも、今晩は晩酌でもしてみようと思います。(笑)