「男女の関係はあったのか?」なんて間抜けなことを聞く芸能レポーター、「この責任をどう取るつもりなのか」と偉そうに語るコメンテイター、「どうしたら売れますか?」と聞く若手芸人、「日本の行く末が心配だ」と我が身を振り返らずに嘆く後期高齢者。全員まとめてバカ野郎。迷惑なバカから愛すべきバカまで、あらゆるバカを〝肴〟に芸や人生について語り尽くしています。
明石家さんま、所ジョージ、鶴瓶、タモリに関する、同じ芸人という立場から繰り広げられる批評がとても秀逸でございました。
明石家さんまは「教養がない天才」。さんまに「教養」なんてものがあったら、絶対あんなに面白くはならない。基本的にいろんな物を知らないというか、教養がないところに面白さがある。話の流れは引っ張って面白く出来るけれど、知識や教養は広げられない。
それに比べて、たけしさんは世の中の色んなことに興味があり、それらについて学び、考えることがすごく好きなんやろうなと思う。どちらが面白いかという観点は別として、同じ芸能界のトップを長年張っている人間同士の視点というか、分析というか。そんなことを深く感じさせてくれました。
師匠に教わったことや、普段のやりとりにも触れています。日常の師匠とのやりとりまで、笑いを仕掛けることを常に求められていたらしい。そして関西弁への嫉妬心も綴られています。お笑いのテンポには関西弁は標準語より適しているらしい。
この記述を読んで少し思ったことがあった。U字工事の栃木弁は、方言のテンポがお笑いに向いているのかもしれない。(笑)
文章にはなっていますが、普段テレビで話してる調子そのものです。しかし活字になっても、ちゃんと笑える面白い本書です。芸人としての切り口や、語り口や、オチ。それがちゃんと成立しているのでしょう。
いろんな分野や事柄について、たけしさんなりに分析して指摘や批判、そしてそれを笑いに転換しているあたりは、本当にスゴイと思う。これくらい考えている人だからこそ、映画監督としても一流になれるのだろう。そんなことを考えさせてくれる本書でありました。