今年の本屋大賞にノミネートされた本書。残念ながら「カフネ/阿部暁子」に大賞を撮られましたが、本書は2位だったということで、面白そうと思い手にとってみました。
夫をなくした母子家庭の秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら、一人息子で野球少年の航太郎を育てています。幼い頃から野球に打ち込み、それなりの結果を出していた中学生の航太郎のもとに、関東の名門校から多くのスカウトの声がかかる。
しかし、航太郎が選んだのは、野球部の歴史が浅い大阪の高校。菜々子もまた、どうせ一人だし、手に職があるということもあり、航太郎とともに大阪の高校の近くへ引っ越すことにする。
不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。不安なことや、理不尽なこともたくさんありますが、それを補うのに十分な素敵な出会いに恵まれる。
本書は、高校野球をメインに描かれていますが、それらはすべて球児を支える母親目線で物語は進みます。
父がいないが故の苦悩、日々の食事や世話、寮に入ることになり離れ離れになる寂しさ。息子の活躍や怪我、強豪校ゆえの父母会の人間関係。それらの母の心情や行動が、とてもお見事に描かれています。
著者はWIKIによれば、神奈川県横浜市出身で、桐蔭学園高等学校の硬式野球部に所属していたと書かれていた。2年先輩には高橋由伸がいたという。
自分の母をはじめ、チームメイトの母もたくさん取材したのだろう。そんなことが思えるくらい、高校野球強豪高校球児の母の心境や、父母会のやり取りなど。とても深く理解すると同時に、母子の愛というか親子の絆など、とても感動をいただける作品でございました。
わたしは涙もろい方では無いとは思いますが、スポーツ系の感動には弱いです。甲子園に出場して航太郎が活躍する場面がありますが、涙がちょちょぎれるような、感動をいただくことが出来ました。
子どもの部活に関して、一生懸命応援していた人や、活躍の先にはなにがあるのか期待していた人。子どもの部活が終わって、これからなにを楽しみにしたらいいのかと「子供の部活ロス」を感じた時がある人や、それが不安な人。そんな人にぜひ読んでほしい1冊です。
プロに入るのが目標で、結局は大学に入るところで、本書は終わっていますが、是非続編に期待したいと思います。
5月6冊目_2025年126冊目