成瀬は信じた道をいく/宮島未奈

 昨年度、本屋大賞受賞の前作「成瀬は天下を取りにいく」を読みました。この続編があると知ったら、誰もが読みたくなるでしょう。それくらい「成瀬あかり」のキャラが素晴らしいです。本書も前書と同じように、様々な挑戦と奇想天外な行動をしてくれる「成瀬あかり」を楽しむことが出来ました。

 本書は5編の構成になっています。

 1つ目は、近所の小学4年の北川みらいが「成瀬あかり」に憧れ、総合学習で彼女を取材しますが、その過程の中で、どんどん成瀬の魅力に取りつかれて行き、最後は「弟子入り」するというそんなお話です。

 2つは、成瀬の父ちゃん成瀬慶彦のハナシです。娘が大学に進学したら、実家を出ていくんじゃないかと思い憂鬱な日々を送っている葛藤が描かれています。娘の大学入試に付き添いで付いて行きますが、雪が降る芝生でテントを設営している受験生に、あかりは「うちに来たらいい」と声をかけ、家に連れて帰って来るというお話です。

 3つ目は、スーパーにいつもクレームを入れる主婦の呉間言実が、アルバイトしている成瀬に声を掛けられ、万引き犯人を一緒につかまえるようなお話です。

 4つ目は、成瀬と一緒にびわ湖大津観光大使になった篠原かれんが、スマホを持っていなかった成瀬がスマホを持つようになって、使い方を教えたり、観光大使としての様々な挑戦が描かれています。

 5つ目は、成瀬は2025年の大晦日「探さないでください」と書かれた書置きとスマホを残し突然姿を消します。それを前の4つに登場する人物たちで探す奮闘が描かれていますが、その裏には、成瀬の壮絶な目的達成が隠されていました。

 成瀬ファンの小学生、クレーマーの主婦、観光大使になるべくしてなった女子大生、誰もが成瀬の魅力に取り込まれていく。

 前作から成長して京大生になった成瀬は、行動力も挑戦内容もとても大きくなっているのに、奇想天外な感じも変わらず、読んでいる私も引き込まれていくような感じがありました。たぶん、このシリーズは続くんでしょうが、続編が出たらぜひ手にとってみたいと思います。

4月50冊目_2025年120冊目