松本大の資本市場立国論: 日本を復活させる2000兆円の使い方/松本大

 日本には株価3倍高を実現できるポテンシャルがあり、株価を上げることが、日本がこの先、大国でいるための分岐点になるという。

 日本のGDPはドイツに抜かれ、世界4位に転落するという報道があった。しかし、日本がこの位置に居続けてきたこと自体、すごいことだと思うべきだという。なぜならこの国は、ヒト・モノ・カネの最適配置していない状態で、世界3~4位の経済規模を保ってこれた。

 ヒトに関しては、年功序列が残っており、上場企業や中央官庁に多く見られる。年功序列が絶対悪ではないが、能力に応じて適材適所すべきだという。

 モノに関しても、今までの成功体験が邪魔をしており、非効率なビジネスがまだ残っている。国内に同じビジネス分野の競合企業がたくさんありすぎる。近い領域の企業が融合し、技術や設備をまとめてグローバルで戦う方法に転化するべきだという。

 カネについては、日本企業の内部留保が多すぎる。リスクのために貯め込むのではなく、新しい価値を生むために、設備導入や新技術への投資を進める必要があり、儲かる事業領域にお金を回すべきだという。

 人口減少に歯止めを掛けなければならないが、長い時間がかかる。先行して効果を上げる手段として、たくさんの人が投資を行い、日本の株価が上昇する仕組みを構築することを、著者は提言しています。

 株を高くして、日本の国力や経済、日本人の生活を良くしていく。人口が減るので日本のGDPを3倍にするのは難しいが、株価3倍高なら視野に入れられるという。

 この国には、2000兆円を超える個人の金融資産がある。多くの個人が投資に向かう環境を今から作れば、株価が上がっていき日本経済はまだまだいける。

 なにかの本でこんなことを読んだ時がある。

 今日より明日、今年より来年が良いと思う人が多ければ人口が増えるし、悪くなると思う人が多くなれば人口は減る。

 たしかに自分の資産が増えると思えば、子どもをあと一人生んでみようか。そんなふうに思う夫婦は多くなるのかもしれない。

 「株価が上がりやすくなる仕組み」として「配当の損金算入」を提案していました。上場企業が投資家に支払う配当は経費として扱うことはできない。配当の損金算入を認めれば、今の税率で1.5倍ほどの配当を支払える。

 仮に配当利回りが一定だとすると、株価は現在の1.5倍になると考えられる。特別なシステムも準備も必要なく、ルールを変えるだけで株価上昇が実現するのだという。

 私は個人的にこの「配当の損金算入」に大賛成です。一応、会社をやっているので利益が出たら、配当を経費にできるなんてとてもいいではありませんか。笑

 さらに、国民が投資しやすくなる仕組みとして、本人確認の必要なくコンビニでインデックスファンドやETFを買えるアイデアなど提案していました。

 ETFは商品の性質上値動きがあるので賛成できませんが、本人確認無しで、コンビニでインデックスファンドを買えるようにするのも、とてもいいアイデアだと思います。

 たとえば、コンビニでインデックスファンドを1万円分買って、子どもに小遣いとしてあげたとします。売るタイミングはは自分で決めなさい。経済を勉強する子どもが増えそうでとても、将来の日本にとっても良いような気がします。

 GDPの3倍は無理でも株高3倍は可能。そんなことをとても理解できた本書でありました。

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