昨日は北上出張だったので、道中でなにか聞こう。そう思いAudibleで「湊かなえ」さんをチョイスしてみました。往復で通しで1回聞くことは出来ましたが、物語が複雑すぎて、帰宅後も2回目を聞き、やっと聞き終えることが出来ました。
二人の女性が主人公の物語です。湊かなえさんは「母性」に続いて2冊目ですが、前書を読んだのを、とても思い出せたと言うか、独特な文章の雰囲気があり、そして前書同様、おみごとでございました。笑
ある日、売れない脚本家である甲斐千尋のもとに、新進気鋭の映画監督・長谷部香から脚本の相談が舞い込む。香が無名の千尋に声をかけたのには理由があった。千尋の故郷で十数年前に起きた「笹塚町一家殺害事件」を次作の題材にしたいと香は目論んでいた。事件は、引きこもりの兄が高校生の妹を刺殺し、家に火を放って両親をも死に至らしめた悲惨なもので、兄には死刑判決済み。
実は、香もかつて同じ町に住み、被害者少女がまだ幼い頃、同じアパートの隣室で暮らした過去があった。事情があって三年ほどで笹塚町を離れてしまった香は、今、改めて、かつての隣人家庭で起こった事件を取材し、映画にしようと考えている。
香は可憐な少女だった被害者がなぜ兄によって殺されたのかを調べ『知りたい』。いっぽう脚本家としての千尋は、自分が『見たい』世界だけを作りたい人。被害者が自分の姉と同じ高校に通っていたにもかかわらず、当時から事件にあまり関心をもたず、正直、今さら調べてどうなる?と思っていた。
『知りたい』と『見たい』は、似ているようで全く違う。当初、香と千尋は、事件に対する見方も正反対で、ぶつかりあう。しかし、そんな二人がそれぞれの視点で事件を調べ直すことで、加害者や被害者に新たな光が当たっていく。
あまり書くとネタバレになるので、書きませんが・・・抽象的で申し訳ありませんが「お見事」です。前に読んだ「母性」も、そうでしたが、親子や兄弟の絆というか、関係性など。独特の語り口で綴られている文章に、どんな人でも引き込まれることでしょう。
物語を通じて『知りたい』と『見たい』は違う。自分は『知りたい』人間にならないと。そんなことを思いつつ、いつも書くことですが、「小説家ってほんとすげぇ〜!」と再認識されてくれる1冊でありました。
11月10冊目_2024年208冊目