土_地球最後のナゾ_100億人を養う土壌を求めて / 藤井一至


 世界中の人たちが、食える土壌を求めて、スコップ片手に世界中を駆け回る。そんな著者のドキュメント作品です。語り口が少しユニークなせいか、とてもおもしろく読ませて頂きました。

 土の種類は12種類しか無いという。その12種類を巡る旅ともいっていいでしょう。泥炭土、ポドゾル、チェルノーゼム(黒土)、粘土集積土壌、永久凍土、若手土壌、砂漠土、未熟土、オキシソル、ひび割れ粘土質土壌、強風化赤黄色土、黒ぼく土。

 土それぞれの特徴や地理的な要因、土を取り巻く問題など。土を通して世界のいろいろなことを知ることが出来ました。

 空港で土とスコップの機内持ち込みを謝絶されて落ち込んだ時があるという。業務として土を掘っているのに、通報され、職務質問を受けることもあったという。

 やましいところは一切なく、土を掘るのを仕事にしている著者。何を好き好んで土なんて掘っているのかと思われるかもしれない。

 家や道をつくるためでもなければ、徳川埋蔵金を捜すためでもなく、100億人を養ってくれる肥沃な土を探すためなのに。(笑)

 世界中の「土」を知ることにより、日本はいかに恵まれた土壌なのか。そんなことを理解することが出来ました。こんな記述があったので、コピペさせていただきます。

 日本人はやはり日本の火山灰土壌や未熟土と密接に結びつき、その恵みを享受していることが分かる。食糧自給率の低さや農地面積の減少、農業の担い手不足という暗いニュースに覆われて忘れがちだが、日本は農業大国になれるだけの肥沃な土を持っている。私たちは国土を危険にさらす外国の脅威には敏感になれるが、その国「土」が荒廃しつつあることには鈍感であることが多い。土の発達には数千年かかるとか、汚染土壌の修復に数百億円かかるという事実に愕然とする前に、予防も可能だ。

  なにも今から畑に出て土づくりを始めなくてもいい、スコップを持って12種類の土をめぐる旅に出る必要もない。それでも、土壌に恵まれた惑星、そして、土壌に恵まれた国に育った人間として、ただそこに当たり前のように黒い土があることの有難みを知っておいてもいいはずだ。土に関わる少数派として、地球の土、日本の土の価値を発信する責務の一端を果たしたいと思う。

 前に読んだ「ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか? / 堤未果」に、世界の中でも優れた土壌菌を有するのが日本の国土。列島の成り立ちのせいなのか、火山活動のせいなのか、地震が多いせいなのかわからないが、わが日本の国土は恵まれている。そんなことが書かれていた。

 日本人で良かった。と思わせる本は多いが「土」に特化した本でも、そんな体験が出来たことは、とても有意義でございました。

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