地面師_他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団/森功


 地面師とは、他人の土地を自分の土地だと偽り、売り渡したかのように見せかけることで金銭を騙し取る詐欺師集団。そんな詐欺師や騙された人に取材を重ねまとめられたノンフィクションです。

 2013年全国に200軒以上のビジネスホテルを所有するアパグループの関連会社「アパ」から、12億6000万円をだまし取った地面師グループの詐欺事件は、男女9人を偽造有印公文書行使などの疑いで逮捕。

 積水ハウス地面師詐欺事件は、2017年に、積水ハウスが地面師グループに土地の購入代金として55億5千万円を騙し取られた事件。 逮捕者15人を出したが不起訴になる容疑者も多数、その後も真相は謎に包まれており、公判でもすべてが明らかになったわけではないという。

 なぜこのような詐欺が成立してしまうのか。不動産所有者を装いやすい不動産取引の実態にあり地面師は買主に対して、本来の所有者を装うために運転免許証、パスポート、印鑑証明書など、偽造して提示して来るが、それらの偽造を見破るのは、不動産登記、書類作成のプロである司法書士でも難しいとされているらしい。

 また、不動産取引では、その性質上売主の方が立場が上(売ってやる、買わせてもらうという関係)になってしまう事が多く、決済の場において買主の取引をサポートする司法書士が、売主の本人確認を十分に果たせないケースが多いことも、地面師詐欺が成立しやすい理由だという。

 この世に二つと同じ不動産は存在しないので、不動産取引において買主は「買いたい」という気持ちが先行しがちになり、取引の場で売主の本人確認を厳密に行うことで売主の機嫌を損ねてしまっては困るという気持ちから、本人確認が十分に行えないケースが発生してしまうらしい。

 不動産取引の決済の場は一般的に、買主による売買代金の振込→売主による着金確認→

売主が買主の司法書士に「権利証」「印鑑証明書」を預ける→司法書士が法務局で登記申請

という流れで進む。

 地面師詐欺の場合、買主がお金を売主に渡してしまってから、法務局で書類偽造が発覚し登記申請が却下されるまでの間には、一般的には数日間のタイムラグが発生する。つまり地面師グループに逃げる時間が発生してしまう事が、この詐欺が成立しやすい理由の一つとなっているのだという。

 分譲された住宅を購入し、住み始めたあとに他人の土地だったと発覚した事例も紹介されていました。ローンを組んでマイホームを手に入れたのに、他人の土地だったなんて、エンドユーザーは何の罪もないのに、訴えられると負けてしまう。
 戦後のゴタゴタした世の中ならまだしも、現代もこんな詐欺がはびこっているのかと、少し怖くなって来ました。笑

 分譲された土地を買った人は、自分の家の土地が本当に自分のものなのか? とても不安になって来る本書だと思います。

9月11冊目_2024年161冊目