宮島未奈さん初の単行本「成瀬は天下を取りにいく」2024年本屋大賞を受賞。2025年は「成瀬は信じた道をいく」は2025年本屋大賞候補。二作とも読みましたが、とにかく成瀬のキャラ設定が素晴らしい。本書はその続きの完結版ということですが、成瀬あかりをもっと見たい。そんなふうに思う人は多いでしょう。
京都大学に進学した成瀬あかりが「京都を極める」という目標に向かって突き進む姿が描描かれています。前作で就任したびわ湖大津観光大使の任期が大学1年次と重なっており、観光大使の活動と並行して、京都の名所100カ所を巡る「京都を極める」プロジェクトをスタート。成瀬の独特な行動力と言葉は、大学で出会うさまざまな「こじらせ大学生」たちを巻き込み、彼らの人生に変化をもたらしていきます。
京大理学部に進学した坪井さくらは、片思いしていた男子が東大に変更したことで生きる気力を失い、入学式から逃げ出します。転倒したところで振袖姿の成瀬あかりと出会い、成瀬に自分の悩みを吐露。成瀬のまっすぐな言葉に触れ、少しずつ前を向き始めます。この出会いが、成瀬の京都編の起点となります。
京大農学部に進学した梅谷誠は、キャンパスで「達磨研究会」という謎のサークルに巻き込まれます。実態は森見登美彦作品オマージュのような、鍋と桃鉄を楽しむゆるい集まり。会長の木崎が「黒髪の乙女」を探す中で成瀬(と坪井)をスカウトし、夜の哲学の道を歩くエピソードに発展。成瀬はこのサークルから京都のガイドブックをもらい、これを付箋だらけにして「京都100カ所巡り」のバイブルにします。
簿記1級を目指す大学生YouTuber・田中ののか(通称ぼきののか)が、北野天満宮で生配信中に成瀬と遭遇。成瀬の天然っぷりに注目が集まり、ののかは嫉妬しますが、配信トラブルで大炎上。落ち込むののかに、成瀬は「生きてるだけでいいんだ」といった意外な言葉をかけ、ののかの心を軽くするなど、成瀬の人格に惹かれます。
成瀬あかりの母・美貴子は、地元テレビ(びわテレ)の取材で、娘・あかりのこれまでを振り返ります。誰にも迎合せず、自分の心にまっすぐな成瀬を「そういう子なので」と肯定しながら見守ってきた母親の覚悟と愛情が描かれています。
競技かるたで知り合った西浦航一郎は、スマホを持たない成瀬と文通を続け、想いを募らせます。ラブレターを誤送してしまったり、すれ違いが続いたりするドタバタの末、京都駅で再会。成瀬もまんざらではない様子で、シリーズ屈指の胸キュン展開。
びわ湖大津観光大使の最後の仕事として、琵琶湖疎水のボートに乗る予定だった成瀬ですが、盲腸炎で入院。成瀬は島崎みゆきに速達を送り、「わたしの代わりが務まるのは島崎しかいない」とピンチヒッターを依頼。島崎が駆けつけ、観光大使の仕事を代行。最終的に退院した成瀬も合流し、篠崎かれんや達磨研究会メンバー、西浦、坪井、ののか、成瀬の両親、みらいちゃん、呉間夫妻など、これまで登場したほぼ全員が集結。琵琶湖疎水を遡りながら「京都を極める」ミッションを完遂。
最後に成瀬の「200歳まで生きる」という目標に対し、島崎が「私も200歳まで生きる」と応じ、二人の絆が最高潮に達する大団円で幕を閉じます。
全体の印象ですが、成瀬は変わらずブレずに突き進み、周囲の人々を明るく照らし続け、成瀬の影響でみんなが少しずつ前を向いている姿が描かれ、爽やかで幸福感に満ちた終わり方になっています。
レビューでこんなことを書いている人がおりました。
「ありがとう、成瀬あかり」と感謝と寂しさが同時に押し寄せる、シリーズ最高の完結編です。シリーズを通して、成瀬あかりという圧倒的な存在が、読者の心に深く刻まれる作品です。
まさに的を得ているレビューだと思いました。そして冒頭でも書きましたが、「成瀬あかりをもっと見たい!」。完結編といわず、是非続編も読んでみたいものです。