熟柿/佐藤正午

  2026年_本屋大賞ノミネート作品、1冊目は「PRIZE―プライズ― / 村山由佳」、2冊目は「ありか/瀬尾まいこ」。本書で3冊目のアウトプットになります。

 昨年は本屋大賞の「カフネ/阿部暁子」を読んでから、他のノミネート作品を読んだので、今年は受賞作が決まる前に、自分なりに予想したら楽しいのでは無いかと思い、なんとか全部読みたいと思います。

 妊娠中のかおりは、ある激しい雨の夜、泥酔して眠る夫を助手席に乗せて運転中、突然現れた老婆を撥ねてしまう。

 パニックからそのまま逃走し、ひき逃げの罪で逮捕・服役することに。獄中で息子・拓を出産するが、出所後、夫から離婚を告げられ、親権も失う。

 元夫からは「母親が犯罪者の子供と、母親に死なれた子供と、どっちがより不幸か」と突きつけられ、かおりは息子に会うことすら禁じられる。

 それでも「一目会いたい」という強い想いが抑えきれず、幼稚園や小学校でトラブルを起こし、接見禁止に追い込まれる。

 その後、かおりは自らの罪を隠し、名前を変えながら日本各地を転々としながら生きていく。過酷な日々の中で、息子を受取人にした生命保険を払い続けるなど、遠くから息子を守ろうとする姿が描かれています。

 過去の秘密が徐々に明らかになりながら、17年にわたる流転の人生が淡々と、しかし胸を締めつけるように進みます。

 タイトルの「熟柿(じゅくし)」は、熟した柿が自然に落ちるのを待つように、時機到来をじっと待つという意味らしいですが、冒頭の葬式とひき逃げに深く関わっています。

 前に読んだ本屋大賞ノミネート2冊目の「ありか/瀬尾まいこ」が、とても素敵なほんわりとした親子関係を感じたあとのせいもあるのか、こんなに息子に会えない母親の悲しさというより、少し異常者とも思えるような心の思想というか怨念めいた感じなど、よくこれほど思いつくものだと、ただただ感心させられました。(笑)

 罪の重さ、母の愛、赦しとはなにか。そして「待つ」ことの意味や切なさをひしひしと感じさせてくれる、そんな作品でございました。

 久住呂咲(くじゅうろさき)ちゃんという、女の子が登場するんですが、かおりに「さきが、ヒソカに呼んできたほうがよくない?呼んできてあげるよ」と、いうシーンがあるんですが、「ヒソカに呼ぶ」という表現自体がおませなんですが、とてもアクセントが効いておりました。