2026年_本屋大賞ノミネート作品、1冊目は「PRIZE―プライズ― / 村山由佳」、2冊目は「ありか/瀬尾まいこ」、3冊目は「熟柿/佐藤正午」。本書で4冊目のアウトプットになります。
昨年は本屋大賞の「カフネ/阿部暁子」を読んでから、他のノミネート作品を読んだのですが、どれもこれも面白かったので、今年は受賞作が決まる前に、自分なりに予想したら楽しいのでは無いかと思い、なんとか全部読みたいと思います。
物語は、現役の文部科学大臣であり文壇の大御所作家でもある清水義之が、全国高校生総合文化祭の式典で、舞台袖から飛び出してきた男に刺殺される事件から始まります。
犯人は37歳の永瀬暁。逮捕された彼は獄中から週刊誌に長編手記『暁闇』を連載し始めます。手記『暁闇』では、永瀬暁の視点で自身の生涯が語られます。
父親は新興宗教「愛光教会」の影響で作家生命を絶たれ、社会的に抹殺されたような死。母親は多額の献金で家庭を崩壊させ、弟は病に苦しみながら亡くなり、家族は次々と不幸に見舞われます。
全ての元凶は教会と、それを後ろ盾にしていたと思われる清水義之にあると暁は確信。宗教2世として生まれ、抜け出せない苦しみ、親を否定できないジレンマ、経済的・精神的搾取の連鎖が詳細に語られています。
そして大転換。式典に居合わせた作家、白金星賀(しらかね せいか)が、事件を題材にした小説『金星』を執筆。フィクションと銘打たれていますが、実は手記では隠されていたもう一つの真実を明らかにします。
『金星』で登場する主人公は長田暁生(ながた あきお)という青年で、手記の永瀬暁とは名前が微妙に違うというありがちな命名です。(笑)
そこに登場するのは、教会の信者家庭で育った少女白金星子(しろがね せいこ)。星子は宗教2世として苦しみ、母親の献金で家族が崩壊し、餓死同然の死を遂げた母の姿を知る。
星子は復讐を決意するが、暁生(暁)はそれを止めることができず、代わりに自分が手を汚すことを選ぶ。つまり、殺人は暁が生前愛した星子を守るため、彼女の代わりに犯したものだった。
手記では「復讐」と「恨み」だけが強調されていたが、小説では「ただ、星を守りたかっただけ」という純粋な愛と犠牲の側面が浮かぶ。そして、白金星賀こそが白金星子本人であり、『金星』は彼女が獄中の暁に宛てた「もう一つの手記」であり、フィクションの仮面をかぶせた真実の告白だったという。
「ノンフィクションの手記」と「フィクションの小説」。二つの物語が重なり合うことで、「憎悪の殺人」と思われた事件が、実は深い愛と救済の物語だったという、そんな感じでしょうか。(笑)
著者本人は「29作目にして一番好き」といっているそうですが、私は「少し複雑過ぎませんか?」そんな問いを投げかけたくなるような、でも「湊かなえ_恐るべし!!」そんな作品でありました。(笑)