ここ何年か、本屋大賞を楽しみにしています。昨年は花巻在中の阿部暁子さんの「カフネ」が受賞したこともあり、カフネ以外のノミネート作品を読んでどれもこれも面白買ったので、今年は2月にノミネート作を読んで、4月にどれが大賞になるのか、自分なりに考察するのもいいかと思いノミネート作は10作ありますが、本書が2冊目のアウトプットになります。
26歳の美空は、夫と離婚後、5歳の娘ひかりを一人で育てているシングルマザー。化粧品工場でパートとして働きながら、ひかりの保育園の送迎や毎日の生活を懸命にこなしている。
ひかりの存在が美空にとって何よりの喜びであり、「ひかりのためなら何だってできる」と心から思える一方で、朝10分早く起きるだけでも大変な現実も描かれています。
そんな美空の支えになっているのが、元夫の弟である颯斗。同性愛者の颯斗は、兄と美空が離婚した後も変わらず週に一度訪れ、ひかりをお迎えに行ったり夕飯を作ったりと、二人の生活を温かく手伝ってくれる。
また、保育園で出会ったママ友の三池さんや職場の同僚など、周囲の人々のさりげない優しさが美空を支える。しかし一方で、美空の心をずっと重くしているのが、実の母親との関係。
自身もシングルマザーとして美空を育てた母親は「育ててやった恩」を繰り返し強調し、美空に金銭的な負担を強いたり、否定的な言葉を浴びせ続けたりする。
美空はひかりを育てる中で、自分が子どもの頃に感じていた違和感や苦しさを改めて思い出し、母親との間で葛藤を抱え続ける。
物語は春から冬にかけての1年間を追いながら、美空とひかりの愛おしい日常、季節ごとの小さな変化、周囲の人々との関わり、そして美空が少しずつ自分の「幸せのありか」を見つけていく過程が描かれています。
血のつながりや「家族」の形を超えた、温かく確かなつながりをとても感じさせてくれる作品でありました。
著者のインタビューで「ひかりは娘がモデルです」と言っているのをみつけました。Audibleで聞きましたが、とにかくひかりのセリフが、とてもめんこくて、突拍子も無くて、やり取りを読んでいるだけで、とても幸せな気分にさせてくれました。そして、子育ての大変さ、そして喜びの両方がとても伝わってくる本書でありました。