ムシバミヒメ_1巻 / 東元俊哉

 たまには漫画でも読んでみようかと思い、KindleUnlimitedをめくっていたら、表紙が印象的。ただそれだけで、手に取りました。

 本書は、サイコホラー・同居人侵食系のサスペンスで、じわじわくる不気味さが特徴です。物語は、顔と指紋を徹底的に破壊された身元不明の女性の惨殺死体が発見される衝撃的なプロローグから始まります。

 このシーンが全体の不穏なトーンを決定づけています。本編の主人公は田中愛(たなか あい)という小説家志望の大学生。文芸サークルに所属し、新人賞に応募するも何度も落選続きで、編集者からも「次で最後」と厳しい現実を突きつけられる。

 生活環境を変えて創作意欲を高めようと、ルームシェアを決意。募集サイトで出会った山口美羽(やまぐち みう)という同じ大学の内気そうな女性と同居を始めます。最初は普通のルームシェア生活に見えますが、美羽の行動が徐々に異常さを露わにしていく。

・愛の服や化粧品を勝手に使う
・愛と同じ場所にホクロを描き入れる
・愛が寝ている間に部屋に忍び込み、体臭を嗅いだり、使用済み生理用品を嗅いだりする
・愛の私物を執拗に観察・模倣する

 愛は不気味さに気づき始め、美羽の部屋にこっそり侵入。そこで発見したのは、愛の写真や私物が大量に貼られた壁、愛の髪型を真似たカツラ、そして愛の生活を詳細に記録したノートなど、完全にストーカーたる証拠の数々です。

 美羽の目的は明らかで、「田中愛という存在」そのものを「蝕み」、完全に自分と置き換えること。タイトル「ムシバミヒメ」の「蝕み」は、ヤドリギのように寄生して宿主を内側から食い荒らすイメージそのものといった感じでしょうか。

 巻の後半では、美羽の異常行動がエスカレート。愛の周囲(サークル仲間、バイト先、友人関係)で「愛になりすました誰か」が悪評を広めたり、原稿を破壊したりと、愛の社会的信用・人間関係を徹底的に破壊していく。

 愛は孤立し、精神的に追い詰められていく。1巻のクライマックスでは、愛が美羽の正体に迫ろうとするも、美羽の計画が着々と進行。本物の愛が「偽物の愛」に取って代わられる恐怖が現実味を帯びてきて、絶望的な状況で1巻が終わりとなります。

 1巻だけでもまぁまぁの完成度です。2巻も読了済みですが、このまま読み進めるとアウトプットしないで、インプットだけ突っ走ってしまいそうなので、とりあえず1巻だけでも書き留めておこうと思います。