漫画家として「テルマエ・ロマエ」で大ヒットを飛ばした著者が、自身の波乱万丈な人生経験を基に「仕事」と「お金」に縛られない自由な生き方を本音で語ったエッセイです。
17歳でイタリア・フィレンツェの美術学校に留学し、貧乏生活の中でチリ紙交換、露天商、絵描き、大学教師、料理講師、テレビリポーター、キュレーター、普通のサラリーマンなど、数え切れないほどの仕事を転々としてきた著者。
シングルマザーになり、生活費を稼ぐために29歳で漫画家デビューし、43歳で大ブレイクするまで、さまざまなトラブル(借金、家追い出し、家族の疲弊など)を経験しながら、働く意味やお金の付き合い方を試行錯誤。
日本社会の「終身雇用神話」や「共同体優先」の価値観、過度な「働き方改革」やコスパ重視の風潮に対して疑問を投げかけています。人はそれぞれ性質が違うから、働き方も生き方も多様でいい。合わない仕事に無理に耐えるより、自分に合った仕事を探す方が生産性も高まるし、幸せだと主張しています。
ビオラ奏者で音楽家の母から学んだ「お金に振り回されない」姿勢や、借金の怖さ、ヒット後のトラブルなども赤裸々に語りながら、「好きな仕事か、向いている仕事かを見極める」とか、「お金にならない仕事は限界までやるか、切り替えるか」とか、「望んだ仕事なら限界まで頑張るが、無理は禁物」だとか。
「お金は大事だけど、それに魂を売るな」とか、「人間環境の豊かさや、知性・教養を深める喜びこそ真の贅沢」だとか。さまざまな教訓を説いています。
著者の猪突猛進で「珍獣」みたいな生き方が、「自分ももっと自由に生きていいんだ」と勇気を与えてくれる一冊です。
体験談がユーモアたっぷりで読みやすく、仕事論を超えた人生哲学として私も含めた、多くの人の心に刺さることでしょう。
中学生のときに、ちり紙交換でアルバイトをして1日500円しかもらえなかったことが、お金のことを考える上での原点になっているようです。
言い古された言葉ですが、「お金で買ってでも苦労はしろ!」という言葉があります。人生の苦労や困難は、お金では得られない貴重な経験や教訓をもたらす。物質的な豊かさよりも、精神的な成長や人間的な深みを重視せよという先人のお言葉です。
著者の体験したエピソードの多くは、私の経験した苦労とは比べ物にならないくらい、壮絶なものばかりです。そんな著者を尊敬しつつ、自分はまだまだ苦労が足りないと、反省させられ、そのへんの自己啓発本より、自分を奮起させてくれる。とても刺激を頂ける、そんな一冊でありました。