迷惑な終活 / 内館牧子

 著者の『今度生まれたら』を読んだら、自動的に本書にオーディブルが誘導したのでそのまま聞いてしまいました。(笑)

 昨年末に亡くなった著者の追悼の意味合いもあるのでしょうか。(笑)これで、著者の読了済みの本は本書で6冊目となります。あとの5冊は『終わった人』『すぐ死ぬんだから』『養老院より大学院』『牧子還暦過ぎてチューボーに入る』『今度生まれたら』です。本書は内館牧子さんの高齢者小説シリーズの第5弾という位置づけらしい。

 75歳の原英太と妻の礼子(71歳)を中心に、終活の多様なあり方をユーモラスに描いた作品です。物語は、横浜で年金暮らしを送る原夫妻の日常から始まる。

 妻の礼子は終活に熱心で、エンディングノートを書いたり、遺言を準備したり、断捨離を進めたりと、死後の家族に迷惑をかけないよう着々と準備を進めている。

 一方、夫の英太は「生きているうちに死の準備なんてする気はない」と頑なに拒否。終活を強要されることにうんざりしていた。そんな英太がある日、終活の本質を考え直す。

 彼にとっての終活とは、家族のためではなく、自分自身が人生のやり残したことにケリをつけること。つまり、過去の後悔を清算し、今を全力で生きること。

 英太は新潟の高校時代の初恋の相手、向山あかねに会って謝罪したいと思い立つ。きっかけは、昔の同級生たちとの会話で、若い頃に女子更衣室を覗き、あかねの下着姿を見てしまい、それを友達に言いふらしたという、少年らしい悪戯の記憶。

 あの時の罪悪感が、60年近く心に残っていた。英太は周囲の呆れや反対をよそに、旧友のツテを頼ってあかねを探し出し、ついに連絡を取る。

 あかねは今も新潟に暮らし、夫を亡くした後、一人で生活していた。英太は新潟へ赴き、謝罪を果たすが、そこから物語は予想外の展開になっていきます。

 英太の行動がきっかけで、あかねの周囲や英太の同級生たち、さらには家族までもが巻き込まれ、それぞれが自分なりの「終活」を始めます。

 例えば、礼子は夫の行動に刺激され、従来の「迷惑かけない終活」から少しずつ変化していく。また、英太の母親や旧友たちも、過去の恋や秘密を掘り起こしたり、思いがけない行動を起こしたりと、ドタバタ劇が繰り広げられる。

 英太の「迷惑な終活」は、周囲に波乱を起こしながらも、みんなに「今を生きる」活力を与えていく。結局、英太はあかねとの再会を通じて過去に決着をつけ、爽快な気持ちになる。

 一方、周りの人々もそれぞれの形で終活(=人生のケリつけ)を見つけ、物語はユーモアと温かさに満ちた結末を迎えます。著者らしい、老いを暗く描かず、笑いと共感を交えながら「自分軸で生きる」ことの大切さを教えてくれる一冊です。

 何かの本で読んだことがありますが、人間が死ぬとき、いちばん後悔することは「挑戦しなかったこと」だという。自分はいま何に挑戦したいのか。それは、やらないまま後悔して、自分は死んでいくのではないか。

 私はまだ50代だけれど、これから70代に向かっていく中で、少しでも充実した人生を送り、後悔しないための人生を送る、ヒントをもらえるような本書でありました。