日本の未来図とも言える秋田県の深刻な現状を徹底的に取材し、人口減少社会がもたらす具体的かつ構造的な課題を浮き彫りにしています。
世界最先端の高齢化地域、秋田。著者は、秋田県を「少子高齢課題県」であり、日本のあらゆる地方が将来直面するであろう問題の「先行事例」として捉えています。世界最速で高齢化が進むこの地で起きていることは、もはや地域特有の問題ではなく、日本全体が抱える構造的なリスクであるという。。
人口が減ることで、地域社会を維持するための機能が次々に失われ、社会機能の維持が困難になるという。安全・治安の面では、警察官や消防団員といった担い手不足が深刻化し、生活インフラの面では、住民の減少により公共交通の維持が困難となり、高齢者の移動・医療コストが増大。さらに、雪国特有の除雪やインフラ維持管理の費用や労力をまかなえなくなる事態も発生する。
人が住まなくなった、あるいは管理されなくなった地域では、深刻な問題が日常生活に忍び寄る。最近騒がれているように、人里にクマなどの獣害が増加し、日常生活の安全が脅かされている。また、農業や中小企業といった地域経済の要である産業においても、後継者不足による存続の危機に達している。
政治的な側面では、有権者の大半を高齢者が占めることによる「シルバー民主主義」の弊害が発生する。これにより、シニア層に不利な政策の見直しが進みにくくなり、若い女性の県外流出が特に止まらず、高齢の親たちが、県外へ出る子どもたちに「無理に帰ってこなくていい」と諦めにも似たメッセージを送ってしまうという、悲痛な現実もある。
著者は、上海から秋田へ赴任した記者としての経験から、東京一極集中がもたらす情報格差と、地方の危機的な現状を都市部に伝える地方ジャーナリズムの重要性を強く訴えています。秋田の今を知ることは、日本がこれからどう生き残るかを考えるための重要な一歩であるという。
本書は秋田の事例を中心に紹介していますが、岩手県や青森県のこともちょいちょい出てきます。全てにおいて、とても他人事とは思えないのが率直な感想でございました。
八幡平のドラゴンアイが、秋田県にあるというのは、初めて知りました。(笑)秋田の居酒屋の店主がじゃじゃ麺が好きで、店で出しても全然売れないのでやめた。秋田は稲庭うどんのような、きれいな麺が好きなので浸透しないんだろうとのこと。じゃじゃ麺って、ほんと盛岡しかない。私もそれはビジュアルのせいではないのではないかと、そんなことを思いました。(笑)