多様性バカ 矛盾と偽善が蔓延する日本への警告/池田清彦

 無駄に増える不要なルールやコンプライアンス至上主義、カタチだけの女性優遇、SNSで暴走する正義幻想や、「変わり者」の徹底排除など。

 「多様性の尊重」が叫ばれて久しいが、今の日本社会は上っ面の「多様性」が自由を奪い、差別と分断を生む本末転倒な状況に陥っているという。

 「ホンマでっか!? TV」でもおなじみの“生物学の専門家”の著者が、「多様性」とは何かを解き明かし、その原因は一体どこにあるのか?「多様性社会」を私達はどう生きればいいのか。そんなことについて、考えさせてくれる一冊といった感じです。

 人は他人の恣意性の権利を侵害しない限り、何をするのも自由。ただし、恣意性の権利は自分からすすんでするものに限られる。

「恣意性(しいせい)」とは、物事の判断や行動が、論理的な根拠や必然性に基づかず、個人の好き勝手な考えや感情に任せて行われる性質のこと。「恣意性」は、良い意味で使われることもあるが、ネガティブなニュアンスで、不公平な判断や偏った意思決定を批判する際に用いられるという。

 愛すること、親切にすること、尊敬することといった、自分からすすんで行う行為は、自分から行う行為は恣意性を認められても、受ける立場になると恣意性がなくなるので、認められない。

 自分が好き勝手にするんだから、相手にも好き勝手にする権利があるので、認めてあげるべき。こんな感じだろうか。

 「恣意性(しいせい)」とは、私は普段使う言葉ではありませんが、「好き勝手な考えや感情に任せて行われる性質」という認識が出来たことにより、人がどうのこうのと言わないようにする代わり、自分はもっと好き勝手に生きても良いのではないか。そんなことを考えさせてくれる本書でありました。