里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く / 藻谷浩介,NHK広島取材班


 人が生きていくのに必要なのは、お金なのか。水と食料と燃料があれば生きていけると著者はいう。食料も地下資源も自給できない日本ではこれまで、こんな議論があまりされて来なかった。

 水も食料も燃料も、日本ではお金で買うもの。そもそも輸出産業が稼いだお金があり、外国から食料と燃料を輸入する。自国に本来豊富にあるはずの水も、都市部では巨大な上水道システムを回さなくては供給できない。

 加えて輸入した燃料を燃やして作った電気が大量に使われている。お金なくして、この小さな島国日本に1億3000万人近くの人たちは生存すら危ぶまれる。

 がむしゃらに働いて、たくさんのお金を稼ぐ。稼いだお金で「衣食住」をどんどん満たしていくという「マネー資本主義」。それにはエネルギーがたくさん必要であり消費される。

「衣」は別として、人間は「食」と「水」に加えて「エネルギー」があればなんとか生きて行ける。マネーを使ってそれらを得ているが、ただ同然に、それを得ることが出来れば十分生活していけるのでは無いかという「里山資本主義」

 自ら野菜を育て、魚を釣ったり、獣を頂いたり、エネルギーは山から薪を調達する。そんなコミュニティーの中で、人生が充実することを可能に出来れば、無理にお金にこだわらなくても良いのではないか。

 食を自給自足し、水は当たり前にある。エネルギーは山から計画的に供給してもらう。そんな里山資本主義。

 なぜ、お金を稼ぎたいのか。衣食住に関連する生活を充実するどころか、無駄に不必要なものまで浪費している「マネー資本主義」はたしてそんな行動は、人間本来が欲している行動なのか。少なくとも持続可能な社会に反している行動とも言って良いだろう。

 キャンプや焚き火、そんな原始的な行動が巷では流行している。それらはマネー資本主義で稼ぎ出したお金を利用し「癒やし」というそんな言い訳で、自分が属する資本主義を否定している事実はある。

 それならたくさんの人が「里山資本主義」に移行できるような、インセンティブがあればもっと活性化されるのでは無いかという、そんな議論も存在する。

 筆者はそれをインターネットとSNSにたとえていた。インターネットの普及をするための補助金は存在したのか。SNSがこれほど普及するために、行政の応援はあったのか。私の認識ではそんなものは存在しない。

 自分にとって楽しければ、他人に勧めたいほどのものであれば、そんなことは黙っていても、実行する人は多くなって行く。

 そんなマネー資本主義には無い、食料と水。エネルギーを自給する。そしてただ同然で提供してもらえる「住」。

 田舎で企業を営むものとして、とてもいろいろ感がえさせてくれる1冊でありました。都会から人を呼べるような、そんな田舎の会社を目指そうと思います。笑

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