最終便に間に合えば/林真理子

第94回直木賞 1985年 受賞作

見城徹さんの本を読むと必ず出てくる林真理子さん。

エッセイ本「ルンルンを買っておうちに帰ろう」でデビューしたばかりで、まだ小説を書いたことがなかった著者に「君は小説が書ける」と言って見城徹が小説を書かせ「君は必ず直木賞を獲る」と言ったというエピソードが見城さんの本ではたいてい紹介されています。

本書は前にも読んだことはありましたが再読です。

「最終便に間に合えば」「エンジェルのペン」「てるてる坊主」「ワイン」「京都まで」5篇の短編集。

印象的なのはやはり「最終便に間に合えば」でしょうか。

昔は取り柄もないOLだったが、リッチになった女が、旅行先で昔つきあっていた男と再会する。食事してから、あと一晩泊まっていくよう薦め誘う男と、今晩帰るという女。そのやりとりは空港へ向かうタクシーでも続く。

やり取りの中から甦る、かつて男にされた酷いエピソード。男の体に溺れるが故、男の理不尽な要求、男の金銭の要求を受け入れる。

人間のイヤな部分やコンプレックスを見事に描写し、読んでいる方までイラッとさせるが、引き込まれる。うまく説明できませんがこんな感じでしょうか。笑

40年近く前の本書ということで、赤電話やどこでもばんばんタバコを吸う様子など、時代背景は大分変わりましたが「男と女」の関係は変わらない様です。笑

本書は著者がまだ30歳頃の1985年の作品であり、当時の著者とほぼ同年齢の女性が主人公に設定されています。自分をイメージして書いているのでしょうが、性描写にとても引き込まれました。私は男のせいなのでしょうか。笑

空港に向かうタクシーで、運転手に間に合うか、間に合わないかと問う一方で、触ったり触られたり、手を払ったり、その感情や快感など。

なかなか、ぐいぐい引っ張ってくれる文章でした。こんな文章を自分で書けるようになれたら、さぞかし楽しいことでしょうね。笑

32 th in October / 300 th in 2022