なんで家族を続けるの? / 内田也哉子 , 中野信子

 いろいろな対談本を読みましたが、二人の相性が最高に噛み合って、お互いの人間性や、タイトルにある様に「家族」について。多方面から考えさせられる一冊でございました。

 樹木希林と内田裕也の娘である内田也哉子さんと、脳科学者の中野信子さんが、互いの「普通じゃない家族」で育った経験を基に繰り広げる対談をまとめた内容です。

 二人は幼少期から家族のあり方に苦しみ、「こんな家族でいいのか」と疑問を抱き続けていた。内田さんは両親の破天荒で別居同然の夫婦生活や家族団欒の少なさ、中野さんは両親の不和と会話のない冷たい関係に傷つき、それぞれ心に大きな影を抱えていた。

 それでも内田さんは19歳で結婚し三児の母として家族を優先し、中野さんも自ら家庭を築いた。そんな二人の「なぜ、それでも家族を続けるのか?」という問い。

 脳科学の視点から中野さんが解説しつつ、二人は率直に語り合う。家族の「普通」は幻想で、生物学的には父親・母親の役割に厳格な決まりはない。アホウドリのレズビアンカップルが子育てするケースなどを、引合いに出しています。

 「育ての親」の影響が血縁より大きいという実験結果や、貞操観念が歴史的に新しい価値観であること。夫婦関係では「惰性で一緒にいるのがしっくりくる」「価値観が正反対だから面白い」など、完璧な共感より違いを受け入れる形が続く理由としてあげています。

 子育ては40代の脳が適した状態になる、母親だけが担うものではない、毒親の連鎖の可能性など。結局、二人が家族を続けるのは、過去の傷を「そういうのもあり」とフラットに受け止め、自分なりの生き方を再構築するため。

 家族はしんどいけれど愛おしく、必ずしも「理想形」である必要はない。むしろ多様な形でいいし、続けられるならそれで意味がある。痛みを知る二人が、義務感や社会通念から解放されながら「家族ってなんだろう」と考える過程が、読者に救いを与えてくれるような一冊でありました。

 中野信子さんの本は何冊か読んでいますが、読了済みの本では感じることが出来なかった、彼女の幼少期から思春期。恋愛観、結婚感など。生々しく感じることが出来て、それを引き出す、内田さんの質問をできるキャラに脱帽。とても有意義な対談本でございました。