臓器ブローカー すがる患者をむさぼり喰う業者たち / 高橋幸春

 日本では特別な治療法と思われがちな臓器移植ですが、アメリカやヨーロッパでは一般的に行われている治療です。アメリカでは、人口3億3200万人に対して年間約1万4000人が死後に臓器提供しており、臓器移植件数は約約4万件。

 一方で、日本では、人口1億2000万人に対して、死後に臓器提供する方は年間100人前後で、臓器移植件数は400件程度。アメリカやヨーロッパの諸外国などと比較しても格段に少ないのが現状。

 世界の臓器提供数を⼈⼝100万⼈あたりの臓器提供者数として⽐較すると、⽇本は1.20であり、アメリカの1/40、韓国の1/8に過ぎないこと から、他国と⽐較して臓器の提供数が少ないという。

 この要因としては、脳死が臓器提供する場合に限り死とされていることや脳死を人の死として受け入れることへの抵抗感、臓器提供の実施可能な施設が限定されていたり、医療施設の体制が整っていないことなどが影響していると考えられている。 制度には大きく2つあり、一つは、アメリカ、ドイツ、韓国のように本人が生前、臓器提供の意思表示をしていた場合、または家族が臓器提供に同意した場合に臓器提供が行われるOPTING INという制度、もう一つは、イギリスやフランス、スペインなどのように本人が生前、臓器提供に反対の意思を残さない限り、臓器提供をするものとみなすOPTING OUTという制度。

 人口の少ない国でもOPTING OUTの制度で取り組む国は、提供数が多くなる傾向があるという。日本は前者ですが、日本で移植医療が進まないのは「充実した透析医療」にも原因があるという。

 治らぬ病を抱え、臓器移植の道を探る患者は多い。しかし移植用臓器は世界的に不足し、殊に日本ではまったく足りない。例えば腎臓は国内で希望しても15年待ち。その間に多くの患者は死に至る。

 金を積めば海外で数ヶ月以内に移植が受けられます。そう言われたら、その道を選択する人がいてもおかしくはない。しかし、その臓器が移植のために殺された人間のものだったら。移植で富を得るための人間が仕組んだものだとしたら。

 そのようなケースを、本書ではさまざまと紹介しています。よく「◯◯ちゃんを助けよう」などと海外で心臓移植するための支援活動を目にするときがあります。それはほとんどがアメリカで行われるケースです。

 アメリカでは外国人がドナーになるケースが有るため、一定の割合で外国人に臓器移植の機会を提供しているのだという。

 本書はそんなクリーンな臓器移植ではなく、様々な国で行われる怪しげな臓器移植について書かれています。劣悪な医療施設、怪しげな執刀医、臓器売買と思われるような事例など。

 お金で健康を買いたいと願う患者と、それを目当てに貪る輩たち。自分はたまたま、臓器移植しなければならないほど、不健康ではありませんが、はたして自分がそのようになった時、どんな風に思うのだろうか。そんなことを考えさせられ、とても酒が不味くなる。そんな1冊でありました。(笑)