宮島未奈さん、初の単行本「成瀬は天下を取りにいく」2024年本屋大賞を受賞。2025年は「成瀬は信じた道をいく」は2025年本屋大賞候補。二作とも読みましたが、とにかく成瀬のキャラ設定が素晴らしい。成瀬のシリーズが続くのだろう、そんな風に予想していましたが、今度は同じ青春系でも、部活にフューチャーした内容です。それも「平安部」。読むまではなんのコッチャと思い読み始めましたが、やはりヒットメーカーはすごかった。あっぱれです。(笑)
県立菅原高校の入学式当日、同じクラスになった平尾安以加から「平安時代に興味ない?」と牧原栞は声をかけられた。「平安部を作りたい」という安以加の熱意に入部を決めるが、新部を創設するには5人の部員が必要だった。クラスメートから上級生まで声をかけ、部員集めに奔走し、なんとか集まったメンバーは個性たっぷり。栞たちは試行錯誤しながら、平安部の活動をスタートさせる。
部員集めで必ず聞かれる、「平安部って、何やるの?」。その回答は「平安の心を学ぶ」。それを卓球のような素早い返しで繰り返します。成瀬シリーズは、成瀬のキャラが際立って素晴らしかったですが、本書に登場する「平安部」の5人全員のキャラがみんなとても素晴らしい印象です。
◎平尾安以加(ひらお・あいか)
1年5組・平安時代大好き。
◎牧原 栞(まきはら・しおり)
1年5組・赤染衛門似
◎大日向大貴(おおひなた・だいき)
1年2組・中学まではサッカー部
◎明石すみれ(あかし・すみれ)
2年1組・元百人一首部の幽霊部員
◎光吉幸太郎(みつよし・こうたろう)
2年3組・元物理部 イケメン
このバラバラな5人だからこそ、平安部という「平安の心を学ぶ」のコンセプトのない部活動に、部員たちがゼロから手探りで進めていく中で、現代の高校生活と平安文化を楽しく結びつける、ユニークな試みが展開されていく感じがとても素晴らしい。
元サッカー部の大貴が中心となって挑戦したのが「蹴鞠」。リフティング技術を活かして伝統的な遊びに挑むという意外な融合も面白いし、そんな蹴鞠で創部間もない「平安部」が認められて、注目されていく様子は「我が子の成功」を見守るような感じを疑似体験出来るレベルです。(笑)
そのほか、さまざまなエピソードがありますが、それぞれの得意分野が自然と、行動や思想に反映され、それらが融合していくところは、読んでいてとてもおもしろい展開でございました。本書は高校入学から創部し、1年目の文化祭までの物語になっています。つまり高校入学から半年程度しか経っていません。
「これからどうなるのよ?」と、思ったのは私だけではないでしょう。成瀬はシリーズ化されましたが、本書もきっとシリーズ化するのではないか。そんなニオイもプンプンするし、それくらい5人のキャラがとてもステキだし、これからを知りたいので、本書のスピンオフを期待しつつ、楽しみにして待とうと思います。