電通マンぼろぼろ日記 / 福永耕太郎


 社内から見えた次の2つの事件。著者の感想を踏まえた社内の状況について、本書では触れています。

 1991年8月27日、電通に入社して2年目の男性社員(当時24歳)が、自宅で自殺した。男性社員の1か月あたりの残業時間は147時間にも及んだとされる。遺族は、会社に強いられた長時間労働によりうつ病を発生したことが原因であるとして、会社に損害賠償請求を起こした。

 これは、過労に対する安全配慮義務を求めた最初の事例とされ、この訴訟をきっかけとして過労死を理由にした企業への損害賠償請求が繰り返されるようになったといわれる。2000年、この裁判は同社が遺族に1億6800万円の賠償金を支払うことで結審した。

 判決では、酒席で上司から靴の中に注がれたビールを飲むよう強要されたり、靴の踵で叩かれるなどのパワーハラスメントの事実も認定された。

 2015年12月25日。 新入女性社員が社員寮から飛び降りて自殺した(享年24)。この社員は、東京大学を2015年3月に卒業し、同年4月に電通に入社。東京本社デジタル・アカウント部に配属されてインターネット広告を担当していたが、同年10月1日付で本採用となってから仕事量が急増した。

 遺族側弁護士の推計によると、1か月の時間外労働は約130時間に達し、過労死ラインといわれる80時間を大幅に越えていた。電通は労使協定で決められた残業時間を越えないよう、勤務時間を過少申告するよう指示していたとみられる。当初は女性社員の別れ話を利用し、個人の問題として片付けようとしていた電通であるが、女性社員個人のTwitterには過労だけでなく、上司によるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントの被害を窺わせる書き込みもされていた。

 私が高校時代、「電通」が大学生に一番人気がある会社だといつもいう社会科のYという先生がいた。高校生の私には、広告代理店という仕事がどの様なものなのか。よくわかりませんでしたが、大人になって漠然とこんな仕事だろう。そんな風に思っていた。本書を読んで仕事の内容を理解することはもちろんですが、良いところがある反面、猛烈な過酷さを垣間見ることが出来ました。

 テレビ、新聞、広告業界、さらにそれらに広告を提供する、大企業のことがよく理解出来たことはもちろんですが、莫大な金が動き、酒が溢れ、接待や贈答品の豪華さ。それにまつわる女たちのエピソードなど、とても興味深く読ませて頂きました。

 著者は在職中に1000万以上、たくさん稼いでいたため、金遣いが粗く消費者金融に手を出したときもあったという。そして重度のアルコール依存症になり退職してから妻に離婚を突きつけられ、そのまま自己破産するという結末になっています。

 みんなこんな人だとは思いませんが、金がありすぎると「タガが外れる」というか、何かしら影響が出てくるのだろう。そんなことを考えさせてくれる1冊でありました。私もアルコール依存症をこれ以上、悪くしないよう注意しようと思います。

9月12冊目_2024年162冊目