プロレスを好きでない人も名前は知っているだろう、スタン・ハンセン。本書はハンセンが引退後、アメリカで余生を楽しみながら、現役時代を振り返り書き残しておこうという趣旨で出したらしいが、率直な感想はサイコウです。笑
特に馬場信者には応えられない内容だと思います。まず、馬場に対する尊敬の念が半端なく凄い。ハンセンは新日から全日に戻ったとき、もう馬場や全日のためにだけプロレスをしようと心の中で決めていたという。
それくらい、馬場のプロモーターとして、経営者として、マッチメーカーとして、そしてレスラーとしての馬場に崇拝する記述がとても多い。笑
ジャイアントチョップがどれだけ痛いかの記述がある。
ジャイアントチョップが、あれほどまで痛いものだとは思わなかった。馬場の手の大きさによるところもあるが、むしろ、その理由は彼の手首の骨にあるのだと思う。ちょっと特殊なのだろう、相当に硬いのだ。 あれで頭蓋骨目掛けてチョップを振り下ろされると、馬場の手首の骨が私の頭を割って入ってくるような感覚の痛みを食らう。馬場は、見かけによらずとてつもなくパワーがある。その力でぶち込まれるチョップは、まるで堅牢な斧が落ちてくるような感じなのだ。馬場と試合をするようになってからは、「ああ、ずっとこのチョップを食らい続けなきゃいけないのか」と、少しゾッとしたものだ。
そして馬場の体型にも触れていた。私も感じていたが馬場は胴体に比べて非常に腕が細い印象だったが、そんな体をハンセンはこの様に解説しています。
馬場と闘っていて感じたのは、彼は全身の腱が強い。試合を見ているだけの立場では理解できないのは当然だが、彼の肉体の強さは筋肉ではなく、強靭な腱にあるのだ。いわゆるマッチョな体軀のレスラーとは、まったく異質な強さがあった。ハードなトレーニングによって培った筋肉が生むパワーではなく、生まれつき備わっている、ナチュラルな強さを感じた。
ハンセンがいう馬場の異質な強さ。よくわからないが、プロレス本を何冊も読んでいるがこんな表現は戦ったものにしかわからないのでしょう。笑
馬場のことだけ書きましたが、それ以外にもたくさんのレスラーが登場します。冒頭で登場するテリー・ファンクへの感謝の手紙。ブロディとの強い絆。修行時代ジャンボ鶴田と同僚だった話。天龍との試合が一番好きだったとか、四天王が成功したのはハンセンのお陰だとか、アンドレのヘットバットがどれだけ恐ろしいとか、ディックマードックはビールを3ケース飲んだとか、テリー・ゴディはタクシーを止めても止まってくれないので地下鉄の乗り方を教えたとか、もう最高すぎるエピソードだらけでありました。
ラリアットの誕生秘話も語られています。アメフト時代に相手を止める際、首のあたりを狙う現在は禁止されているタックルからあみだしたという。そして、叫びながら腕を上げサポーターを引っ張る。お決まりのポーズ。必ずカウント3をとれる技でなければならないという美学。
中学時代、全日や新日を熱狂的な眼差して見ていた私には、とても感動的な本でありました。こんな本を世に送り出してくれた、ハンセンにありがとうと言いたいと思います。笑
14 th in November / 300 th in 2023