2003年発行の本書です。現在はどれくらい改善されているのかはわからない。しかし20年前にこんな世界が、まだ存在していたということについて「カースト制度」という学校で習う「差別問題」と短い言葉で教育される、そんな教えはどうなのか。そんな風に思えるほど、知らない、そして悲惨な世界を垣間見ることが出来ました。
「はじめに」で、このようなエピソードが紹介されています。
40年前というから、1960年位の出来事だったのでしょう。インドに滞在していた著者が、現地の人の車で移動中、農夫を轢いてしまった時があったという。著者は運転手に止まるよう強くお願いしたが、止まらずそのままその場を去ったという。轢かれた農夫のまわりにはたくさん人が集っていたのに。全く報道もされず、警察も全く動かない。身分の違う同じ国民を、轢き殺すことに対して罪悪感すらなかったという。
轢かれた農夫は「不可触民」
ググるとこんな説明が出てきます。
不可触民とは、カースト制度の外側にあって、インドのヒンドゥー教社会における被差別民である。 総数は約2億人と推計されている。不可触民は自分たちをダリットと呼ぶ。 インド憲法では、スケジュールド・カーストと呼称する。
そんな著者の体験からはじまる本書です。
中国と並ぶ、世界最大の市場。
IT革命のチャンピオン。
そんな風に報じられるインド。
恩恵を受けている人間は確かにいるのかも知れないが、全人口の85%といわれる、底辺インド民衆は果たしてその恩恵を受けることが出来るのか?
インドで何らかの身体障害をかかえている人は一億人以上もいるという。視力障害者4500万人、内全く眼の見えない人900万人。その内500万人は治療を受ければ治る人たち。
中でも子供たちの盲目、視力障害は年々増えている。
その最大の原因は栄養不良だという。
その他、本書で印象的だったのは、結婚という男と女の生理的欲求に基づく行為。日本では本人同士で繰り広げられるのに、インドは人間関係がカーストという制度によりこれほど制約を受けるのか。親が婚姻相手を決めるのは当たり前。親を無視した男女関係や結婚に関するカーストによる制裁行動など。とても信じられない世界です。
中国に次ぐ世界市場のインド。
何年か先には中国の人口を超すと、様々な本には書いています。
分母の大きさは、たしかに経済的には魅力的なのかも知れない。
インドと比べると、少子高齢化で人口減少の日本。
数字だけでは無く、生活の質を考えれば、
本当に幸せな国、日本。
そんなことを思わせてくれる1冊です。笑
中国の次はインドが来る。
様々なビジネス本には書いています。
それは発展途上にあるということと、人口増加のフェーズにあるということ。そして何より国民の平均年齢が低いという、数字だけの統計で語られているが、カーストの分布統計について国全体がまとめる事は、ダブーとすら感じられるような文化が存在する。
上辺の統計から判断するインドとは違うインドが存在するのは、前に読んだ「13億人のトイレ 下から見た経済大国インド/佐藤大介」でも非常に感じましたが、報道を一方的に信じる事は危険であり、様々な方面から見ることにより感じ取れることが多くあるという。
そんなことを痛感できて、大変勉強になりました。笑
20 th in November / 325 th in 2022