著者は今年の本屋大賞を受賞した「カフネ」の、花巻在中の作家です。岩手県在住の作家が本屋大賞を受賞したという事実も衝撃的でしたが、私はノミネートされた10冊中、7冊読みました。どれもこれも甲乙つけがたい感じでしたが、今までにない感じ? そんなテーマ? 潜在的にみんな思っている? そんなテーマが飛び抜けていたから受賞したのではないか。そんなことを思っておりました。
本書は「カフネ」とは、同じ作家なの? そんなことを思わせてくれる、ミステリー。それもとびきり、これでもかと複雑な人間関係を燻り出してくれる。そんな物語でございました。
大学生の春風と高校生の錬が偶然出会ったことから始まる青春社会派ミステリー。ある日、春風の知り合いである70歳の女性が路上でひったくりに遭い、春風と錬は咄嗟に犯人を追いかけるが、取り逃がしてしまう。
犯人が落としたストラップに心当たりがあった春風は、被害者から「犯人探しはしないで」と頼まれながらも、どうしても気になって仕方ない。
そこへ正義感の強い錬が押しかけ、二人は「二日間限定」で探偵コンビを組んで真相を追うことになる。最初は軽快でユーモラスな掛け合いが続くが、調べれば調べるほど事件の裏側に、特殊詐欺や倒産詐欺、闇バイト、そして貧困に追い込まれた人々の悲痛な実態が浮かび上がってくる。
謎の男「カガヤ」を中心に、春風、錬、そしてもう一人の女性・理緒の三つの視点が交錯しながら、ひったくりが単なる偶然の犯罪ではなく、巨大な闇のネットワークの一端だったことが明らかになっていく。
私は、人間関係が複雑すぎて、2回。オーディブルで聞かせていただきました。2回聞いたからこそ、複雑な人間関係を理解することが出来ました。
本屋大賞を取った「カフネ」が、オーディブルにあるので聞いてみたらという、読書友達がいた。感想を聞いたら「微妙」というニュアンスの解答でありました。
しかし、そんなあなたに薦めたい。このミステリーは素晴らしく複雑で奥深い。この作家が岩手にいると言うことを誇りに思い、そのへんに転勤になって、ご飯でも食う機会があったら、ぜひ誘ってほしい。そんなことを思わせてくれる本書でありました。(笑)