本書は解剖学者の養老孟司氏と作曲家の久石譲氏による対談形式の内容です。音楽と脳の関係を軸に、科学と芸術の交差点を探るそんな一冊でしょうか。本書を読んで、音楽が単なる娯楽を超え、人間の脳や感情、文化に深く根ざしていることを改めて感じさせてくれました。
養老氏は脳科学や生物学の視点から、音楽が人間の認知や感情に与える影響を解説。久石氏は作曲家としての経験や音楽創作の裏側を語っています。
印象的だったのは、養老氏が「音楽は脳の構造と深く結びついている」と語り、音がリズムやパターンとして脳に刻まれる仕組みを説明していた点だろうか。
例えば、母音の響きやリズムが胎児期から脳に影響を与え、言葉や音楽の基礎となるという点は、音楽が「人間の本能」に近い存在であることを指摘していてとても興味深い。
久石氏の話からは、音楽を作る過程での直感と論理のバランスの良さが伝わってきます。ジブリ映画の名曲を生み出してきたエピソード、特に「ナウシカのテーマ」がどのように生まれ、観客の心を掴んだのかという話は、創作の神秘性を感じさせてくれる内容でありました。
養老氏の科学的視点と久石氏の芸術的感性が交錯することで、音楽が「考える」行為そのものとどう結びつくのかが浮き彫りになる感じでしょうか。音楽を「耳で考える」行為として捉える視点が、とても新鮮な印象をいただける本書でございました。