残照の頂 続・山女日記 / 湊かなえ

 湊かなえさんは何冊目だろうか。オーディブルをめくっていて見つけたので、そのまま聞きましたが、「続」ということで、前作もあったようです。しかし、前作に触れることもなく聞かせていただきました。やはり、湊かなえさんの文章はホント独特というか、本書も映像化されているということで、売れっ子はすげぇ〜なぁ〜と、そんなことを再認識させてくれる一冊でありました。 

 亡き夫への後悔を抱く女性と、人生の選択に迷う会社員。失踪した仲間と、共に登る仲間への、特別な思いを胸に秘める音大生。娘の夢を応援できない母親と、母を説得したい山岳部の女子大生。日々の思いを嚙み締めながら、一歩一歩山を登る女たち。山頂から見える景色は、苦くつらかった過去を肯定し、これから行くべき道を教えてくれるかんじでしょうか。

 これらの女性たちは、日々の思いを噛み締めながら、一歩一歩山を登っていく。山頂から見える景色は、彼女たちの苦くつらかった過去を肯定し、これから進むべき道を教えてくれる。

 インタビュー記事で読みましたが、著者自身、学生の頃から登山に親しんでいたが、結婚を機に遠ざかり、2008年、デビュー作『告白』が大ヒットすると締め切りに追われ、「外出すらままならない生活」だったという。

 そこで考えたのが、「山を舞台にした作品の取材」を名目にすること。編集者に掛け合い、2011年に北アルプスの白馬岳で再開。以来、執筆の合間を縫って山行を重ねたという話です。

 「昔は楽々だった登りでバテてしまうと、以前の自分がいかに同行者を気遣えていなかったか分かる。同じ山でも、訪れる人生の時々で、自分を見つめ直すきっかけになる」そう思ったという。

 取り上げる山は、すべて自分の足で歩く。「私の本を読んで、行ってみようと思う読者もいるかもしれない。そうしないと、責任を持って書けません」。そんなことが書かれていた。

 実際に自分の足で登っていないと、とても表現できないような細かい描写がとても、おみごとでございました。そして、著者の作品でよく登場するコーヒーが、山で飲むというシュチュエーションでとても印象的に描かれておりました。

 レビューで「女はなにか無いと山に登らないのか?」と、そんなことを書いている人がいましたが、とても的を得ているのでは無いだろうか。そんなことを思わせてくれる内容でありました。