農林水産省の調査によると #休耕田 を含む 耕作放棄地 の面積は2015年で42万3000ヘクタール。1990年からの25年間で、ほぼ倍増。
これはほぼ 滋賀県 に匹敵する面積。滋賀県全土がほぼ手付かずの状態で放置されているとイメージすると、耕作放棄地の拡大が実感出来る。
確かに私の会社のまわりでもここ25年スパンでみると倍増とまでは言わないが、3割程度は確実に増えているだろう。農業就業人口 は2000年の390万人から、2018年には175万人と半減。このうち65歳以上の高齢者が120万人で、平均年齢も2000年の61.1歳から、2018年には66.8歳に上昇しているという。もちろん現在は更に上をいっていることは容易に想像が出来る。
サラリーマンなら定年退職し、のんびり暮らしているような世代の人たちが、日本の農業界の主力選手として支えている現実がある。建設業界 も高齢化が騒がれているが、それどころの騒ぎではない。
建設業でも使われていた、「きつい」「汚い」「危険」の「3K」に、農業は「稼げない」「#結婚できない」を加えた「5K」の職業と言われているらしい。
悪いイメージばかり語られる農業ではありますが、本書は農業の可能性は無限大であると説いています。最高におもしく、読むだけでも「日本は農業大国になれるポテンシャルがある国」で、これからの農業に関してワクワクさせてくれる内容でありました。
「稀人ハンター」と自称する著者が、農業の世界でイノベーションを起こす10人の物語を紹介しています。
・元エリート会計士が作る「究極のピーナッツバター」
・東大卒「畑に入らないマネージャー」が推進する500のカイゼン
・世界の一流シェフを魅了する「ハーブ農園」
・京都の自動化レタス工場が世界を席巻する日
・アマゾンより早い野菜流通革命
・女性「未利用資源オタク」が切り開く新エコシステム
・ITのパイオニアが挑む「日本農業を知的産業に」
・悪臭の出ないスーパー堆肥が農業を変える
・毎年完売する100グラム1万円の茶葉の秘密
・岡山の鬼才が生んだ奇跡の国産バナナ
上から6番目の「女性 未利用資源オタク」は 奥州 の事例でございました。私が一番印象的だったのは、最後の「国産バナナ」でしょうか。
凍結解凍覚醒法(とうけつかいとうかくせいほう)
植物の細胞を時間をかけて徐々に冷却して凍結させることにより、耐寒性を備えさせる技術。熱帯植物もかつて氷河期には現在の温帯と同程度の気温の環境下で生息していたという事実に基づき、種や苗を凍らせて解凍することにより、その土地に生息出来るように適合するはず。
そんな持論のもと、実験を20年以上歳月を費やして、日本の環境に適合したバナナを作り出したのだという。探究心はもちろんすごいですが、最後に紹介されている言葉にとても大きなビジョンを感じます。
シベリアは、日本の平野の数十倍の面積がある。水も豊富だし、永久凍土だから害虫も病原菌もいないだろう。そこに成長速度の速いパパイヤを植えたら、どうなる?DNAを解析して耐寒性と成長速度をコントロールできるようになれば、小麦だって、米だって植えられるようになる。世界の人口が100億を超えても大丈夫な量の作物ができるんよ。そうしたらこれはもう農業革命だけじゃなくて、人間の生き方が変わる。腹いっぱいもの食べたら、あほなこと考えなくなるじゃろ。
こんな言葉を聞いたら「地球が全てにおいて足りなくなくなるから火星に行こう」と言っている イーロン・マスクもぶったまげ ですね。(笑)