著者は元日本農業新聞の記者としての8年間を経たあと、JAという農家の組合組織内部で起きていた、さまざまな不正について紹介されています。
JAは、「農業協同組合」本来の理念や目的を忘れてしまったのではないか。共済(保険)事業と信用(銀行)事業に依存し、職員に過大なノルマを課した結果、いまや多くのJAで「不正販売」と「自爆営業」が蔓延っている。
やらないことは「パチンコ」と「風俗」くらいで、その業態は多様種にわたっているという。元「日本農業新聞」記者である著者が、農協を愛するがゆえに書かざるをえなかった、渾身の告発ルポだそうです。笑
・自爆営業を強いられている決定的証拠
・損するだけの共済商品に切り替えを勧める職員たち
・介護状態にならずに死ぬと1円も戻ってこない「介護共済」
・受け取り開始が90歳設定の「年金共済」に意味はあるのか
・高齢者や認知症の人に営業、半ば強引に契約
・ノルマ地獄を逃れるため、職員は続々と転職
・存続のためだけの、理念なき合併に突き進む地域のJA
・権力闘争に明け暮れる経営者たち
・史上稀に見る76億円の巨額損失を計上した「JA秋田おばこ」
・津軽と南部の対立で役員不在となった「JA青森中央会」
・梅農家の苦境を放置し、業者と結託する「JA紀南」「JA紀州」
・組織の論理に搦め捕られた「JA全中」会長
本の紹介文にある見出しを見るだけでも、とてもスリリングな印象です。
共済(保険)商品の売り込みの実態は、とても巧妙というか、完全に訳のわからない年寄りたちを騙すというか、「農協さん」と信頼している組合員に詐欺をはたらいているとかしか思えないような、そんなやり取りまで紹介されています。
誰も達成出来ないようなノルマに悩み、自爆営業という名の自分で掛け金を捻出する手法。多い人では年間300万円以上ノルマ達成のためにつぎ込んでいる人もいるという。
むかしニュースなどで、農協のノルマがすごいとか、見た覚えがある。本書は私の想像のかなり上を行く印象です。農協からJAに改名されたあたりだったろうか。とっても大変でやめたくなるとか、誰から聞いたが覚えていないが、そんなことを思い出した。
現代のネット時代では、本書で紹介されているような状況が現実にあるとしたら、簡単に暴露されて世の中にすぐ広がってしまうので、現在は改善されているのだろう。
むかしの状況はどんなだったのか。私が本書で知り得たこととどれくらい相違があるのか。そして現在はどうなのか。よく知っているJA職員がいるので、こんど根掘り葉掘り聞いてみようと思います。笑
5月17冊目_2024年107冊目