著者は仙台出身。10代半ばで極真空手に入門。高校卒業後に上京し、プロ格闘家の道を目指し、佐山聡が率いたタイガージムに入門。その後、シーザー武志率いるシュートボクシングに移籍。その後、正道会館、リングス、K−1。私は知りませんでしたが、格闘技マンガ『グラップラー刃牙』の主人公・範馬刃牙のモデルらしい。
私はプロレスが好きだったがピークは中学校3年生くらい。1980年代の前半くらいだろうか。むかし好きだった影響もあり、それなりに見ていたが著者のことは知らなかった。
佐山、前田、シーザー、ヒクソン。様々なプロレスや格闘技に関する本を読みましたが、これほど総合格闘技の原点というか、キーマンに精通していた人物がいたのだろうか。紹介されるエピソードはすべて生々しければ、真実味にあふれています。
佐山は天才すぎるがゆえ、教え方が抽象すぎるとか、前田の教えはそれに比べて上手だとか、ヒクソンから学んだ下から攻撃する奥義。そしてシュートボクシングの創始者、シーザー武志に崇拝する。
様々な師匠や格闘技に精通した著者だからこそ、シュートボクシング、空手、グレイシー柔術、プロレス。各分野ならでは、それも当事者目線から見た風景は、後世に語られて良いのでは無いかというそんなレベルです。笑
石井館長も出ていました。「K-1」を国民的イベントにしてみせたプロモーターの姿を、とても近い位置から見ていた著者からだからこそ語られるエピソードも非常に興味深い。
何より一番感じたのが、著者が純粋に「強さ」を追求、そして極めたい。そんな思想やそれを達成するためにする行動が、とてもビンビン伝わって来ました。せっかくなのでYou Tubeで著者の試合を見ようかと検索しましたが、出てくる物は著者の試合というより、著者のことを称賛する前田の言葉とか、引退した後の著者のチャンネルが多かった。笑
本の紹介でこんな言葉が使われています。「プロレスと格闘技の狭間で“本物の闘い”を追い求めた者たちによる日本格闘技史」
とても的を得た、言葉だと思う。プロレスやK-1。総合格闘技など。世間の注目やマスコミの影響により、普通の人が注目するところは動いて行く。そうでは無く、マスコミにコントロールされているのかも知れない。
そんな流動的な世間に対し「本当の強さ」を追求して行く著者の姿勢。著者の名前は聞いたことは無いけれど、総合格闘技は好き。そんな人には是非、読んで欲しいと思う。そんな1冊でありました。
13 th in November / 299 th in 2023