都会は強くて田舎は弱いのか? 著者をテレビで紹介していたのを見たことがある。「食べる通信」という一次産業の生産者を取材し、こだわりや背景を紹介し雑誌にする。
作り手の物語を知れば、その人が作ったものを食べたくなる。著者が作ったのは「食べ物付きマガジン」一見シンプルですが、誰も気づいていなかった、アイデアです。テレビでその内容を見たときに、すごく共感したのを覚えている。
そして、本書を読むまで気が付かなかったことがある。著者は岩手県議会議員(花巻選挙区)から、2011年9月に岩手県知事選挙に出馬し次点で落選した人だった。震災の年ということもあるのか、選挙の対抗馬も全然記憶になかった。笑
震災が起きたあと、都会から田舎に来るボランティアがたくさんいた。なぜこのような都市から地方への流れが、震災前からなかったのだろうかと、著者は思ったという。東北地方はどこも過疎、高齢化、行財政難、経済・人口縮小という、ほぼ共通の問題を抱えている。震災前、大都市で暮らす人々は、こうした地方の農漁村が抱える問題に、まともに目を向けることはあったのか。
2011年は「絆」という言葉がもてはやされた。もともと都市と地方の「絆」がなかったからこそ、「絆」が叫ばれたのではないか。被災地を訪れた都市住民たちは、震災前から過疎、高齢化で一次産業の担い手が減り続け、疲弊する農漁村の実態を知った。実際のところ、津波が来ようが来まいが、行き詰まっていた。なんとかしてあげたい。してあげなければならない。そんな使命感を持つ人がたくさんいた。
しかし、そうした疲弊する農漁村の姿を生み出したのは誰なのか。農漁村で暮らす人たちだけのせいなのか。都市で暮らす人々は、口に入れるものを選択する時、値段を基準にすることが多い。都市部に住む人達は、こうした問題を生み出す側に間接的に加担し、共犯者としての自分を自覚しなければならないのではないかと著者はいう。
都市には強みもあるが弱みもある。
田舎には弱みもあるが強みもある。
災害などの緊急時だけではなく、平常時に「助け合い」という形で、対等なつながりがたくさんできれば、都市と地方は対等になることが出来るのではないか。著者が提供しているサービスは、商品ではなく、「生産者と消費者のコミュニティ」というソフトです。
紹介されているエピソードがとても素敵です。繁忙期に都会から手伝いに来る消費者たち。生産者がすごく困っている経緯を説明したら、200人もの人が、稲刈りに来たエピソードなどは感激して涙ものでした。更に、そこに炊き出しに使って欲しいと、自分の生産したものを送る違う生産者などいるあたりも素晴らしい。
都市を捨てて田舎に行く必要はなく、田舎を捨てて都市に行く必要もない。コミュニケーションコストがゼロになった現代、都市にいながら田舎の良さを知ることができるし、田舎にいながら都市の良さも知ることはできる。都市の強みと田舎の弱味、都市の弱みと田舎の強み。これほど相性の良いものは無いのではないか。そんなことをとても痛感させてくれる、内容でありました。
商品を売るのではなく、コミュニティを創造する。田舎に暮らすものとして、とても元気をもらえると思います。養老孟司氏が本の帯にこう書いています。「未来社会を思い、豊かに生きたいと思う人たちに、ぜひ読んでもらいたい本です」全く同感です。本書は超オススメです。笑
17 th in July / 200 th in 2023