こんな一節がありました。
東京都内の小さな大学で講義をした際、20人ほどの学生にこんな質問を投げかけてみた。
「外国に働きに行けば、月200〜400万の収入が得られる。だけど、1500万円の借金を背負わけなければならない。外国では毎日のように夜勤の肉体労働をすることになる。そんな条件で皆さんは外国に行きますか?」
ベトナム偽装留学生の条件を日本人に当てはめ、学生たちに問いかけてみたのだ。結果は、「外国に行く」と手を挙げた者は1人もいなかった。
ベトナムから来た新聞配達をする外国人新聞奨学生。
日本人の同僚は皆、原付バイクや電動アシスト。
留学生だけ普通の自転車だと言う。
留学生に許された労働時間は週28時間。
朝の折込から配達。夕刊の準備から配達。
到底、週28時間では消化出来ない。違法就労が日常化。
この、留学生に新聞配達をさせると言うシステム。
朝日新聞が始めたシステムだと言う。
新聞は外国人実習生に関しては取り上げるが、実習生に対して同情的で、実習制度を批判。違法就労など留学生問題についてはほとんど報じない。それは配達現場が、留学生に違法就労を強いて成り立っている。
留学生問題に触れれば、配達現場に火の粉が及ぶ。それを新聞社は恐れているのだと言う。
前回読んだ本では、縫製工場、自動車関連の労働者。今回は新聞配達。いろいろな所で外国人労働者が、私達の便利で安価な暮らしを支えているようです。
本書はベトナムが前半。後半はブータンに移ります。
ベトナムに負けず劣らずブータンからの留学生も増えているようです。
この本を読むまで認識はありませんでしたが、ブータンは小国で人口が80万人程度なのでベトナムほど来ている印象はありませんが、人口比率から考えるとベトナムに匹敵しているのだと言う。
ブータン。親日?。そんなイメージですが、日本に来た留学生が大変な思いをしているようです。
それは親日が故、国が後押しした背景も見え隠れしています。
日本が好きだった、ブータン国民が日本に希望を持ち、留学や研修と言う形で訪れる。
来てみれば、過酷な労働と無くならない借金。
日本国民としてなんだか、非常に申し訳ない気分になります。
ベトナムにせよ、ブータンにせよ。送出側と受入側が完全にビジネス化している。これが私が3冊読んだ印象です。
まずは送出側。
日本に行けば稼げると甘い言葉で人を集める日本語学校含むブローカー。留学するには成績や日本語力、親の収入が必要。その証明を偽造して作成。そんな手数料と渡航費、1年目の学費を合わせて借金させる。証明の偽造はワイロ社会で容易。加えて高い手数料の方がよい職につけるのでは無いか。そう考える人も少なくないと言う。そんなブローカーがベトナムには数百あると言う。
そして受入側。
日本語学校や専門学校。生徒確保に必死。重労働を低賃金でしてくれる労力がほしい事業所。この2つがセットになっている構図あり。更に、現地で送出機関を運営している者もいると言う。そして、送出側と受入側のキックバックも存在するのだと言う。
日本に夢を抱いた若者を利用し、大人が「人」と「金」を動かして利益を得ているのでは。そのように思えてしょうがありません。
筆者の締めの言葉を引用させていただきます。
留学生の労働力がなくなれば、朝日新聞の配達現場は成り立たなくなるだろう。スーパーやコンビニの弁当の値段、宅配便の配送料なども値上げされる。コンビニや飲食チェーンでは「24時間営業」が成立しない店も出てくるはずだ。だからといって、〈もはやこの国は成り立たない〉わけではない。外国人の犠牲によって維持されている私たちの「便利で安価な暮らし」が成り立たなくなるだけだ。
全国隅々にまでコンビニがあって、深夜でも温かい牛丼が「380円」で提供され、スーパーでは「398円」で弁当が買える──。そんな暮らしは世界でも日本人だけが得ている特権だ。
しかし、もはや限界なのである。最近、人手不足のため脱24時間営業を求めるコンビニオーナーたちが声を上げ、ニュースとなった。まさに「限界」を象徴する現象といえる。現状を無理して維持しようとすれば、必ず代償を払うことになる。外国人頼りの職種では賃金が上がらず、日本人の働き手はさらに遠ざかっていく。
専門学校や大学にとって偽装留学生の受け入れは〝禁断の果実〟だと書いた。学校の経営は維持できるが、日本人の学生はいっそう遠ざかる。それと同じことが、外国人労働者の働く職場でも起きていく。問題は賃金に留まらないだろう。ひとたび景気が悪化すれば、底辺労働の現場で外国人と日本人の競合関係が生まれる。リーマンショックでは、日本人より先に外国人が職を失った。
しかし、外国人の方が安く使えるとなれば、次の不況では日本人からクビを切られるかもしれない。また、外国人の失業者が国内に溢れる状況もあり得る。そうなったとき、日本人の怒りは「移民」へと向かい、排斥の動きが高まっていく。それは欧州の歴史がすでに証明している。
途上国の出身者であろうと、日本人が嫌がる仕事は、できれば彼らもやりたくない。母国の賃金が上昇するか、さらに魅力的な出稼ぎ先が見つかれば、彼らはさっさと日本から去っていく。
世界最高の「便利で安価な暮らし」は、私たちの欲求に企業が応えて実現した。しかし、働く側の私たちは、他国の人々よりも幸せになれたのだろうか。「便利で安価な暮らし」を手に入れた代わりに、私たちは大切な何かを失ってはいないのか。
留学生を斡旋するブローカー、バブルを謳歌する日本語学校、そのおこぼれに与かる専門学校や大学、留学生の違法就労をわかって雇い入れる企業、何より「留学」をエサに新興国の若者を日本へと誘い込んでいる政府──。皆、醜悪である。だが、その醜悪さもまた、他者を思いやる余裕をなくしてしまった、落ちゆく日本と日本人の姿そのものなのかもしれない。
大変勉強になりました。
移民・外国人労働者関連。1テーマ5冊でAランク(笑)
3冊目なので、あと2冊は読みたいと思います。笑
移民/外国人労働者「1テーマ5冊でランクA(1/5)」
2019年3月発行 ブラジル人移住者が集う「保見団地」について多く書かれています。オリンピック開催を控え、移民の問題に加え、高齢化の深刻さを感じることができます。
移民/外国人労働者「1テーマ5冊でランクA(2/5)」
2010年発行。縫製工場で働く中国人研修生。自動車産業を支えるブラジル人。リーマンショックにより派遣切り。失業から再就職できない葛藤など。興味深く描かれています。
「1テーマ5冊でランクA」
1つのテーマを感じ取ったとき、関連書籍をあと4冊。読んで見ようかと思わせてくれた。そんな書籍です。
だいすけ@190dai.com
新しモノ好き。ガジェット大好き。 平成元年から小さい建設会社。今は社長です。小さい会社なので、営業的なことや技術的なこと。除雪もします。ガジェット、カメラ好きが講じ、ネットやPC、Drone好き。外食する時や夜の会合なども多いので、食べ歩きやガジェット。仕事のこと。読書。そして地元のコトを中心に書いて行こうと思います。
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