保守政治家 わが政策、わが天命 / 石破茂

 建設次官から鳥取県知事、そして参議院議員を務めた父二朗は、田中角栄と深い親交があったが、死後は角栄は石破茂の父代わりとなり、著者を政治の世界に引き込んで行く様子がとても詳細に語られ「田中角栄最後の弟子」と言われる所以が読み取れます。

 父は石破茂に政治家になってはいけないと、言われ銀行員になりますが、4年後角栄に口説かれ政治家に転身します。「握った手と歩いた家の数しか票にならない」。そんな角栄の教え守りを邁進します。

 結婚に関するエピソードがとても興味深く面白い。角栄は独り身の茂に「お前は金が無い」からと、新潟の建設屋の令嬢を妻にするよう薦めます。石破はすでに付き合っている大学の同級生がいることを告げると、角栄にすかさずこう問われます。「その女はどこで働いているのか?」

 その時、石破は青ざめたという。彼女の職場はロッキードの渦中にいた「丸紅」だった。「商社です。」と答えたところで、あとからバレると思い、思い切って「丸紅です!」と答えたところ、角栄の顔が変わり考え込んでしまったという。

 そして次の質問は「その女の親御さんはどこ出身だ?」。これはしめたと思い、堂々と「新潟です!」と答えたなら「なら、いい!」と言われたという。

 結婚するにあたり角栄に仲人を申し込んだところ、俺は父親代わりだと断わり、結婚式ではずっと母の横に立ってくれ、スピーチでは「丸紅はいい会社だ。私のことがなければもっといい会社だ!」と場内を沸かせたという。

 読書がとても好きらしく、読書感について多く書かれていた。いろんな知識を本から得て、自分のスピーチの参考にし何回も繰り返すことで、自分の考えとしてまとまっていくというようなことが書いてあった。これはまさに、私のやっている「読書のインプットとアウトプットの繰り返し」に近いのでは無いかと、そんなことを思い少し共感させられた。

 角栄が石破に言った言葉でとても印象的な言葉があった。「おまえ(石破)が立候補すれば、知名度があるので1億8000万円使わないで済む!」何かと批判されがちな世襲議員。親や親戚の政治家が持つ地盤、看板、かばん(金)を引き継いで選挙に当選した政治家のことですが、これくらい使わないで済むなら、いなくならないのは当然なのかもしれませんね。

 父は茂に「金太郎」と名付けたかったというエピソードを紹介していました。そんな名前にするといじめられると、母が止めて吉田茂の「茂」か、佐藤栄作の「栄作」か悩み「茂」になったという。本人は「栄作」より「茂」で良かったと書いてありましたが、総理大臣まで上り詰めれるくらいなら、いっそのこと「金太郎」だったら良かったのにと個人的には思いました。(笑)

 私は石破茂は大嫌いです。(笑) 総裁選のときも高市になって欲しいと思っていたし、現在の政権運営もとてもうまく行っているとは思えないし、石破政権の元では次の選挙は自民党はとても苦戦すると思っています。

 しかし本書を読んで成り立ちや思想を少し知れたことで大嫌いレベルが10だとしたら、レベル9くらいまで下がったので、石破嫌いの人には、おすすめできる本書です。(笑)