リセット(新装版) / 垣谷美雨

 いままで垣谷美雨さんの本は、たくさん読みました。「農ガール、農ライフ」「姑の遺品整理は、迷惑です」「あなたの人生、片づけます」「七十歳死亡法案、可決」「定年オヤジ改造計画」「うちの子が結婚しないので」「老後の資金がありません」「四十歳、未婚出産」「うちの父が運転をやめません」の9冊読んでいて本書は記念すべき10冊目です。(笑)

 本書は初期の作品ですが、読んでいなかったので、手にとってみました。

 高校時代、特に仲がいいわけでもなかった、クラスメートだった3人の女が都内のデパートで30年ぶりに再会し、居酒屋で食事をすることになります。

 居酒屋内の会話で当時のエピソードから始まり、現在に至る経緯を話す中で、高校生に戻りたいという展開になるわけです。

 その会話を影で聞いていたのか、店主がこんな言葉をかけてきます。

 「次の注文は高校3年生でいいですか?」

 3人は酒の勢いもあり、店主のススメもありその「高校3年生」を注文すると、3人は同時に17歳にタイムスリップしてしまうという、まさに小説の真骨頂といったような展開です。

 17歳から人生をやり直す。そんな決意をしながら生活していく3人ですが、そんな3人が17歳にもどったときが印象的でした。

 1人は自分のヤンキーメイクに愕然し、1人は自分の声は酒と煙草に侵されていない、透明で綺麗な声にたじろぎ、1人は17歳の夫の姿をみて感動する。

 17歳にもどっても3人は47歳の精神のままです。その時に感じ取れなかったものを感じ、見えなかったものも見えるという、とても不思議な感じの学園生活を送るという物語です。

 自分は今の精神のまま、17歳に戻れるとしたら、どうなるのだろう。とりあえず身長は185cmくらいになる。(笑)

 ここ40年の社会的変化をみているので、どんなものが流行るか、どんな株が上がるかわかるので、とてもお金持ちになれたのではないか。そんなことを思う。

 しかし現在、アルコールとニコチンの依存を抱えたままで、高校生になったら若死ににまっしぐらなのかもしれない。

 本書では結局3人はもとに戻るんですが、所詮ないものねだりをしているだけで、本当に必要なのは、過去を悔いるより、これからをどう生きるかの方が大事。そんなことを考えさせてくれる本書でありました。

 様々な視点から社会の問題や矛盾に対して、問題提起や解決策をコミカルに展開していく感じの、垣谷美雨ワールドといった感じは、どの本にも共通するイメージです。まだ読んでいない作品もあるので、ちがうやつも読んでみようと思います。

2月8冊目_2025年19冊目