著者は元農林水産大臣。2019年刊行の本ですが、2018年に種子法が廃止されたことに対して強く危機感を提起しています。
種子法が果たしてきたとても重要な役割を、歴史を通してとても具体的に説明しています。種子法とは簡単に言ってしまえば、次の様な内容です。
農作物の原種(種子の親種)・原原種(原種の親種)などの生産を全ての都道府県に義務付け、品質の良い種子の生産や普及を図っていた。 その結果、各都道府県では高品質なブランド米の開発・提供が積極的に行われてきた。
しかし「民間企業と連携してより効率的な種子の生産体制構築が進むことをめざす」と、いうそんな曖昧な理由で、国会で大した議論もされず種子法は廃止された。
日本の農業を市場として、農薬と遺伝子組み換え作物のセット販売で大儲けを狙う巨大アグリ企業の、ロビー活動で行われたとしか思えないというようなことが、書かれていました。
生産者が育てた作物の種子を用いて、栽培した作物から次の作付けに必要な種子を自ら採種する「自家採種」が当たり前だったが、 イネなどの自殖性作物は品種になる段階では、外見で分かる形質については実用的に固定しているが、自家採種を続けることにより品種退化が認められ、収量低下も認められることから、定期的な種子更新が必要なため、各県にある農業試験場で、その地にあった「種」を提供してたが、その行為をやめる、予算をつけなくても良いと言うことになる。
自分の作った作物から採った「種」で、次の年に作物を作っていると思っている人は多いだろう。私も本をたくさん読む様になる前はそう思っていたが、実はぜんぜん違う。
日本の「種子の自給率」は10%も無いと言われているくらい、海外からの輸入に頼っているのが現状です。それら種子の多くは遺伝子組換されたり、ゲノム編集しているものが多いという。
なぜそんなことが行われているのか。本書ではモンサントの話がだいぶ出ていました。モンサントという会社は知らなくても「ラウンドアップ」は皆さんご存知だろう。誰もが知っている除草剤ですが、それを作り出した会社がモンサントです。
除草剤を使うことにより、作業の手間が減ったり、収穫が増えたりするが、収穫したい作物に影響がある場合を想定して、ラウンドアップに耐性を持った種子を遺伝子組換えで作り出す。そしてそれに適した化学肥料もセットで提供する。
種子、農薬、化学肥料をセットで販売することにより、大きなお金を手にすることができる。更にその提供する種子は「F1」といって、いい子供ができるがその性質は孫の代までは継承されない。つまり種子を採取できないし、毎年種子を買わなければ駄目なループに入って行く。
日本を除く、アメリカはもちろん、EU、中国、ロシア、韓国など、猛烈な勢いで「有機」「無農薬」に転換し、消費者の目も厳しくなっているため、そんな作物や農薬は日本に多く来るようになっているという。
こういう本を読むといつも思うことがある。何を食ったらいいんだべ。本書も「読書ダイエット」のオススメ本に加えようと思います。笑
7月11冊目_2024年144冊目