はだしのゲンはピカドンを忘れない / 中沢啓治

「はだしのゲン」は10代の頃に漫画を読んで、

悲惨な歴史という程度の認識でしかありませんでした。

本書は漫画ではなく、文章。

挿絵程度に漫画が散りばめてある内容です。

漫画ではなく、文章だからこそ、

伝わるものが多くありました。

文章を読んでいて、もう読みたくないと思う衝動にかられるときがある。その描写が悲惨すぎて、文章を読むというアクションなのに、拒否したくなるときがある。

思いつくのは、日航123便の事故現場だろう。現場の状況や発見される遺体の状態など。もう、読むのをやめようかと思うくらい悲惨なものだった。

最近では「救急病院/石原慎太郎」の、結婚間近で幸せいっぱいの女の子が、事故にあった描写が酷すぎた。

しかし、本書はそんな次元をはるか超えていた。

そんな印象です。

広島に原爆が落とされた直後から、始まる悲惨な世界。

被弾直後に逢う人たちや、町の様子を描く描写が凄い。

東日本大震災を経験するものとして、

その何十倍の悲惨さとも言っていいだろう。

広島市内には、アメリカは日本を占領したら、広島に基地を作るので攻撃しない。そんな風潮があったという。B29が上空をとんでも市民はみな「偵察」だと思いこんでいた。実際、原爆投下するまでの半年は、広島は攻撃対象にならなかった。それはアメリカの作戦だったという。

1945年8月6日。早朝に空襲警報があり、市民の大半は防空壕に逃げ込んだ。しかし攻撃はされなかった。市民が今日も「偵察だった」と思い込ませてから、日常生活に戻った8時15分。人類史上初の都市に対する核攻撃。如何に沢山の人達にダメージを与えるか。それが作戦だった。

歴史は報道や洗脳によりコントロールされる。

広島で体験した著者だからこそ、伝える言葉、そして力がある。

この手の被爆体験本。

漫画という手法も絡めて、社会に投げかけていた著者。

最近ではウクライナの悲惨な状況や、

3月が来れば「震災から何年」と報道するけれど、

その何十倍もの悲惨な経験を、

日本の広島という地であったと言う事実。

忘れてはいけないと思わせるそんな1冊でありました。​​​​​​

20 th in February / 46 th in 2023