2011年3月11日、岩手県陸前高田市を大地震と大津波が、海から5キロも離れた街が壊滅する。地震から数日経っても家族の安否も分からない。いつもの安全で便利な暮らしからは想像もできない現実に襲われた時、人間はどうなってしまうのか。
高3の娘を持つ夫婦のお話です。東京の大学に行きたいという娘と、それに反対する父。母の介護も重なり、そのせいで夫婦の関係はギシギシしています。娘は東京の大学に合格しますが、そこに訪れる震災。
大学に行かなくていいという娘に対して、快く送り出す父母。本の題名にもありますが「てんでんこ」についてとても触れています。
てんでんこに逃げろ!!
その言葉は、江戸時代から壊滅の記録が残る、この地方に残る悲しい教えです。「転んだ年寄にかまうな」「自分を守れ」「てんでんこ」に。なぜなら年取った者を助けようとして若者が死んでしまったから、村が全滅してしまうからです。
「てんでんこ」とは、津波から逃げるだけではなく、その後に残されたひとりひとりが前へ進む、ひとりひとりが復興に向けて一歩ずつ踏み出す、ひとりひとり強い意志を持つ、そんな意味もあるのではないでしょうか。
震災からもう少しでまる14年になります。あらためて「てんでんこ」について再確認させてくれるそんな一冊でありました。
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