サイバースペースの地政学/小宮山功一朗,小泉悠

 ネットの世界では場所は関係ない。そんなことがよく言われる。しかし自分が日頃使っているデータがどこに有るのか知っている人はいないだろう。私はEvernoteのヘビーユーザーだし、iCloudも有料で購入しているが、どこのサーバーにあるのかわからない。

 本書で取り上げられていた「データセンター」ようするに、サーバーを入れる建物です。ベッドタウンとして人気を集めている千葉県印西市は、IT業界では大規模なデータンセンター(DC)が集う「DC銀座」になっているという。

 私の使用しているEvernoteやiCloudなら、反応時間が0.1秒遅れようが特に問題ないが、AIなどにより瞬時に反応を求められるサーバーは首都圏から近ければ近いほど良いという。

 かたや首都圏から遠い、北海道の「石狩データセンター」について触れていた。データセンターはとにかく電力を必要とするらしい。現在国内消費電力5%はデータセンターで消費し、その消費量は毎年12%づつ増加しているという。

 ではなぜ石狩なのか。そんなに電力を必要とするのか。サーバーを安定的に稼働させるためには温度を少し低めに保つのがとても重要で有り、北海道の石狩であれば、首都圏よりその必要とする電力が少なくて済むのだという。

 私達の生活にインターネットという、インフラは欠かせないものになっている。それを支えるサーバーがとても大きな電力を必要としているという、そんな事実を知ることが出来たことはとても有意義でありました。

 本書ではその他「海底ケーブル」について書かれていました。海底ケーブルの総延長は約120~140万kmあり、地球の約30~35周分に相当するという。

 海底ケーブルは、海で隔てられた地域間を直接つなぎ、インターネットや国際電話、海外のスポーツ中継などのデータ通信を担う通信インフラであり、世界中の海底に張り巡みりされ、インターネットのデータ通信の99%が海底ケーブルを通っているという。

 海底ケーブルの敷設は、ケーブルシップと呼ばれる船が何千kmもの長さのケーブルを巻いて積載し、海底に投下しながら進んでいく手法で行われる。海底ケーブルは、髪の毛ほどの太さの光ファイバーを束ね、金属や樹脂の厚いカバーで保護して深さ数千mの海底に沈められる。

 海底ケーブルの歴史は古く、1850年にドーバー海峡を通され、イギリスとフランスを結んだものが最初と言われている。ケーブルシップは戦時中もたくさん利用され、用途がゆえ攻撃の対象になったという。

 もうインターネットするようになって、30年も経つがそれらの99%が海底ケーブルを系しているなどは、考えたことが有りませんでした。それを知れただけでもとても有意義な本書でありました。

 これくらい世界中に張り巡らされている海底ケーブルですが、自然災害や漁業などにより、ちょいちょい断線することがあるという。それをケーブルシップで直しに行くエピソードが紹介されていました。

 海面から4000m下の海底ケーブルにロボットを卸して線を切ってから、どちら側が生きているか死んでいるか試しながら、断線と修復を繰り返し断線箇所を特定するのだという。

 この作業をわかりやすい言葉で例えていた。「世界一難しい4000mもあるUFOキャッチャー」掴んでから海面に上げるまで9時間もかかるという。そんなエピソードを知れただけでも、毎日ネットに触れる現代人はすべて読んだ方がいい。そんな風に思える本書で有りました。

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