本書が刊行されたのは2009年なので、リアルタイムなものではありませんが、本書で懸念しているものは、改善しているどころか、悪化の一途を辿っているのでは無いかと思うほど、とても近い将来を言い当てているのでは無いかと思わせられます。
日本は「働く気さえあれば、なんとか食える」という時代であり、現在も全く無くなってはいないとは思うが、昔の状況とが違うフェーズに突入している。
2009年当時のアメリカの事情がたくさん引用されていますが、本書で取り上げた「貧困スパイラル」というテーマ。民営化と市場原理で追いつめられるのが中間層。企業が利益を求めれば、安価な労働力を求め、中間層は不必要になって行く。安い労働力がなければ、海外に拠点を移し雇用の維持すら無くなって行く。
みんな学歴を求め奨学金を使い高学歴になったところで、奨学金を返済できるような雇用に就くことが出来ない現状がすでに存在する。社会人をマイナスからスタートさせ、その返済のスタートラインにも立つことが出来ないが、何もしないわけにもいかないので、非正規雇用の道に踏み込んで行く。
中間層になりたくて手に入れた学歴は、非正規雇用になるためには逆に不採用にされる原因になるため、隠すことが必要な時があるとそんな事例も紹介していました。そして「貧困スパイラル」から抜け出せなくなって行く。
貧困は他人事だと考えていた中間層が、どんどんと貧困に落ちていき、貧困層が拡大。アメリカでは医師、教師までもが貧困層になっていき、日本でもその動きは拡大していくのではないかと説いています。
アメリカでは奨学金が返済出来そうがない人に、軍隊がリクルートするという。日本でも進学者が少ないような高校に、自衛隊が勧誘に行く事例を紹介していました。
軍隊も自衛隊も、もちろん必要なのは理解しますが、「貧困層に行きたくないならこっちにおいで!」的なものにどんどんなっていくのではないか。そんな恐怖すら感じるとともに、私は果して大丈夫なのだろうか? そんな危機感を憶えたので、精進して頑張りましょうと奮起させてくれる一冊でありました。
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