「働き手不足1100万人」の衝撃 / 古屋星斗,リクルートワークス研究所


 これまで「人手不足」は好景気により需要が創出され、供給が間に合わなくなる現象であったが、これから起ころうとしている「人手不足」は、まったく様相が異なるという。

 人口シミュレーションでは、2040年には働き手不足で現在の生活は成り立たない。そんな警鐘をならしています。現在の便利な生活は、他人の労働力で成り立っている。インターネットが出来るのは、そのインフラを支えてくれる人がいる。ポチればものが届くのも、配送してくれる人がいれば、道路の通行を確保してくれる人もいれば、トラックを整備してくれる人がいる。

 自分で全て完結できる人間など日本にはいない。必ず誰かの「働き手」という形で支えられている。無人島に1人で住んでいる人の話を例にあげていた。

 さもさも自由気ままに生きている印象があるかも知れないが、実際はすべてを1人でやらなければならないので、毎日忙しくなにかしらやっているのだという。衣食住はもちろん、身の回りの整備は自らがやる必要がある。

 軽い言葉で「人手不足」というが、究極の行く末はどうなるのか。そんな恐怖すら感じさせてくれる本書でありました。

 著者は解決策を4つ提案しています。①_徹底的な機械化・自動化 ②_ワーキッシュアクトという選択肢 ③_シニアの小さな活動 ④_企業のムダ改革とサポート

 「ワーキッシュアクト」について皆さんは御存知だろうか。労働供給制約が生活を破綻させてしまうかもしれない未来を回避するために、自動化・機械化と並ぶ重要なファクターとして検証するのが「ワーキッシュアクト:Workish act」1人の人間がいろんな場面で活躍する社会へのパラダイムシフトが起こる必要があるという発想に基づいている。この社会には本業の労働・仕事として担う人に限らない、当初想定していた以上に多様な担い手が存在している。

 一つの例として、スマホのゲームをすることで結果として地域のインフラ点検に貢献している人がいる。そのゲームでは、地域のマンホールや電柱を撮影し位置情報に紐づけることで、マンホールの蓋や電柱の位置と状態が網羅・一覧化される。これにより、全国に1500万基あるといわれるマンホールの点検作業に必要だった上下水道の維持管理を行う自治体などの職員が、本来労力を割くべき修繕や交換業務に集中できるようになる。

 参加した結果、協力している人が、楽しんだ結果、それが社会にやく立って行く感じだろうか。それをもっと多方面から吸い上げることにより、労働力不足を補っていく。とても今どきの手法では無いかと妙に納得してしまった。笑

 「企業のムダ」という章でこんなことが書かれていた。「雇用を守るという思想は素晴らしい。しかし、そのために労働者にムダな時間を過ごさせていないか。一見、社会に貢献しているようで、貴重な労働力をムダにしていないか?」

 この記述に関し、私は経営者なのでとても胸に刺さりました。笑 自社にとって今日は余剰人員かも知れないが、他社は猫の手の借りたい状態が存在するのかも知れない。自社にとっても、あと数名今日は欲しいが、人員が足りないまま非効率な作業をしているときがあるかも知れない。

 岩手県、そして宮古市というこんな田舎で、建設業に従事している貴重な労働力。少しでも有効的で流動的に動くことができれば、賃金というインセンティブにも反映することができて、その結果、貴重な労働力が流入できる地域になるのではないか。そんなことを考えさせてくれる一冊でありました。

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