堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法 / 堤未果


 911テロ、東日本大震災、コロナ禍、ウクライナ戦争、銀行破綻、地球温暖化。大惨事が起きたときに必ずそれを食い物に、儲けようとする人たちがいる。

「ショック・ドクトリン」とは、テロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に為政者や巨大資本がどさくさ紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことだという。

 そんな裏で手を回す、莫大な利益を得る企業の、情報操作から手法まで色々と書かれています。コロナ禍は、なんだったのか。東日本大震災の時はどうだったか。とても考えさせられる本書です。

 ショックドクトリンとは、大事件や大災害をいい機会と捉え、特定の集団が多額の利益を得るような施策や緊急措置として実行される。どさくさに紛れて、偽善を装いながらお金をむしり取りに来る。そんな印象だろうか。

 東日本大震災のあと、孫正義がメガソーラーに進出したことを例にあげていた。原発が悪いものだと国民はみな感じた。そんな思考力のない国民皆パニック状態のときに、政府にFITを提案し事業展開して行く。

 メディアは円安が原因とか都合の良いことをいうが、このときのFITという固定買取価格制度を政府が受け入れたことにより、現在の電力の値段が上がったという報道はほぼ無い。

 自分の近くでもそんなことを感じることが出来た。宮古市の震災瓦礫を東京都は受入れてくれた。石原慎太郎の本も何冊か読みましたが、裕福な東京が地方を助けて何が悪い。そんな言葉で、周辺を説得する言葉に感銘をうけたのを覚えている。

 東京都に感謝する宮古市民は多いだろう。しかし、その処分を請負をした会社について、興味を持った人はいないだろう。私も全く本書を読むまでそんなことは考えたことがなかった。

 その会社は「東京臨海リサイクルパワー」東京電力が筆頭株主の会社であり、東京都が求めた処理能力は、この会社しか無く、全く競争原理が働かないまま、受注する経緯になったという。

 まさに本書で著者が提案する、パニック時に偽善者を装い、マネーの猛者になり懐に飛び込んでくる。宮古の瓦礫を引き取ってくれてありがとう。そんな感謝の気持の裏では、東京都の莫大なお金が、東京電力にバックしていた。

 そんな図式を知れたこと。そして自分はどれくらいメディアに左右されないで行動出来たのか。そんな反省ならまだしも、自己嫌悪させてくれるような本書でありました。

6月4冊目_2024年119冊目