明治の人物誌 / 星新一

星新一の父・星一。アメリカの大学を卒業し帰国して製薬会社を起業。事業は成功したが、政争に巻き込まれ衰退。しかしエネルギッシュな生涯だった。父の夢と理想を共にした野口英世、伊藤博文、エジソン、後藤新平など。

近代国家の形成期に活躍した明治人たちと父の交流と、星一の生涯を辿りながら、世間ではあまり知られていないような明治の偉人たちを、星新一からの視点を踏まえながら知れる。

最近、後藤新平関連を読み漁っていて見つけた1冊です。

本書で初めて知ったことがあった。

なぜ、後藤新平は東京市長になったのか。

自ら望んだのでは無く、東京市会が満場一致で東京市長に選出したという。当時の市政は乱脈をきわめ、汚職の容疑者が続出し、大手術の必要があった。報道関係も、まさに適任と論じ、手腕ばかりでなく、人柄をも見込まれた。

 後藤はためらったが、就任をすすめる人は多かった。

 「人生、一度は貧乏くじを引いてみるか」

そして、年俸の2万円にけちをつけた。 「もっと出せ。2万5千円にしろ」

そんなに金が欲しいのかとの印象を与えたが、すべて市へ寄付。

所得税は自分で払った。

「さすがは、われらの市長」

市民は拍手し、人気は一段と高まったと言う。

このエピソードはほんの一部ですが、星新一が父「星一」の人脈を通じて知り得た事実や、書き留めてあった文章を元に、とても興味深い伝記仕立てです。

中村正直、野口英世、岩下清周、伊藤博文、新渡戸稲造、エジソン、後藤猛太郎、花井卓蔵、後藤新平、杉山茂丸。

10人について描かれています。

ショートショート名手の著者が、伊藤博文の功績の多さは、多すぎて要約出来ないだとか。

野口英世は苦労の極みという印象があったが、酒と女に溺れる放蕩ぶりがひどいとか。

新渡戸稲造の素敵な夫婦事情とか。

後藤新平関連を読みたくて手にとった本書でありましたが、単純に面白すぎた。笑 

歴史教育について触れているところがあった。

日本は国民性なのか。始まりから教えないと気がすまない。

大化改新だの大宝律令など少なくとも名前はみんな知っている。

しかし次第に暗記しきれなくなり、うんざりした頃に明治維新になる。

伊藤博文についてはお札の印象以外あまりない。

全く同感です。笑

後藤新平に興味が出たことにより、明治、大正、昭和初期。

そんな激動の時代を知ることが出来ましたが、

1000年以上前に起きたことを知ることよりも、

100年くらい前から起きた出来事を知ることが大切。

そんなことを感じさせてくれる1冊でありました。

個人的に思った。

歴史教育は、最初から覚えるより、

現代からルーツを探りながらさかのぼるべき。

今に興味を持てないのに、ルーツに興味は持てないだろう。

歴史が嫌いだった私はそう思う。笑

​​​​​​08 th in February / 34 th in 2023