戦前から現在に至る日本プロ野球選手の中から、野手については打順ごと、守備のポジションが重ならないようベスト1を選ぶ。投手は1リーグ時代とその後10年ごとのベスト1を選び、クロ―ザ―3名とセットアッパー1名も選ぶ。
野手については、打率、本塁打数、打点、出塁率、安打数などデータを駆使し、守備のデータも加えて、時代を越えたメンバーを選ぶ、著者の素晴らしいデータ分析力です。笑
過去の様々なデータを知れることは、もちろんですが、紹介されるエピソードも印象的なものが沢山ありました。
富士鐵釜石(現新日鐵釜石)から69年にプロ入りした、阪急ブレーブスの山田久志。山田の特筆すべき点は勝率。勝率7割以上が実に6度。うち8割以上が2度。ただ、そういった数字より「自分はプロの投手である」「自分はエースである」という強靭な自負を背負い、相手の4番との対決に己の存在を賭けた、そういった闘争的な生き様が印象に残る投手だという。
200勝がかかった82年4月のロッテ戦。山田は味方の援護を受け9対6で勝って無事にそれを達成するが、4番の落合博満には3本塁打された。
落合は前年の首位打者。山田は、4番とサシで勝負できるのはエースの特権とばかりに、予告通りに伝家の宝刀シンカーを連投。勝負に行って、全部打たれたのだという。
「チームの迷惑にならないように頑張りました」。球団は、インタビューの模範例をDVDで用意しているというが、チームのためなら、対決という醍醐味を避ける野球でいいのか。それでファンは魅力を感じるのか。選手は、それで成長できるのか。そもそも誰のためにプロ野球はあるのか。疑問が沸々と沸いてくると著者は説く。
野球は「データ化」と言う大義名分の元、どんどんつまらないものになっていく。数字を追い求めサラリーマン化していくことについて、果たしてこれで良いのだろうか。その様に考えさせてくれる内容です。
本書はプロ野球の歴史から始まり、数多くの選手の記録からエピソードを多方面にわたり紹介されています。とても優れた「日本プロ野球ハンドブック」と言っても良いでしょう。
本書を読んで、日本プロ野球界について、大分詳しくなったという、満足感を得ることが出来ました。笑
2th in December / 348 th in 2022