海が見える家/はらだみずき

なんとか就活で入った先はブラック企業。働き始めてすぐ退職する。再就職のアテもなければ貯金もない。そんな時、疎遠にしていた父親の訃報が飛び込んできた。孤独死したのか。どんな生活を送っていたのか。仕事はしていたのか。友人はいたのか。父について何も知らないことに愕然としながらも、父が住む南房総にある海が見える別荘地を訪れる主人公。

現地に赴いて火葬を済ましてから、生前の父の行動を探って行く。知れば知るほど、自分が描いていた父親像とはかけ離れている。素敵な友人知人もいれば、楽しい人生を謳歌し、そんな父に対して羨ましさすら感じてしまう。

父の生き様が最初は信じられなかった主人公が、父がしたように海や自然と触れ合い、誰かから必要とされることで感化されていく。

最近読んだ、死後の遺品整理の小説「姑の遺品整理は、迷惑です/垣谷美雨」では、親が残した遺品に奮闘する娘を体感したばかりだったので、こんなにうまくは行かないだろうとツッコミたくはなりますが、とても心あたたまる内容でありました。

生前父が近隣の皆さんに必要にされていた事や、素敵な交友関係を築いていた事により、主人公とその姉までも、移り住もうというような展開です。

これもまた、最近読んだ「相続レストラン/城山真一」の「相続は仏教語」というのを思い出す。笑

『相続とは、仏教用語の「相(すがた)」を続けること』を語源としており、「受け渡す方の意思が、確実に受け継がれること」

生前は疎遠だった父が子供に残してくれた、かけがいのない家、そして交友関係を相続することにより、子供たちは新しい人生を再スタートする。亡くなった父も天国でさぞかし喜んでいることでしょう。笑

自分の人生がおもしろくないなら、なぜおもしろくしようとしないのか。他人にどんなに評価されようが、自分で納得していない人生なんて意味がない。

何が常識で、誰の人生で、自分はどう行きたいのか。

「生きるためには」よりも「どう生きたいか」

そんなことを考えさせてくれる1冊です。

どんだけ、短期間で前向きになるんだよという感じの、素晴らしくうまく行き過ぎる展開で、ツッコミどころだらけな所は多々ありますが、とてもほっこり出来ることが出来ました。

この本はKindle Unlimitedで読みましたが、続編もあるようです。続編はやはり有料の様です。そうゆう作戦だったようです。笑 気が向いたら、ポチろうと思います。笑

31 th in October / 299 th in 2022